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60歩目 ページ20

家に帰ってきた蒼とAは一緒に夕飯を作り一通りの家事を終え、今は少しの休憩を挟んでいるところだ。

「……ねぇ蒼」

聞くなら今がチャンスだ、腹を括れA!とAは自分を叱咤した。あの時の―――全てが終わったら話してくれると言ったあの件を、蒼に聞くのは今しかない。

「モモとよく、分からない言葉で話してたでしょ?あれは何の話だったの?」

途端、蒼の顔が明らかに強張った。だが蒼は短くため息を吐いて力を抜いた。

「A」

蒼が名を呼ぶ。恋人になるなら名前で呼びたい、という蒼のお願いを受けたAは、蒼のちょうどいい低音でいつもより甘ったるく名前を呼ばれている。心臓が持たないから普通に呼んで!となっているのがAの内心だ。

「Aは優しいから、これを聞いたら自分を責めちゃうかもしれない。それでも聞く?」

蒼は心配なのだ。自己肯定力のないAに麗と付き合った原因を話せばさらに自身を追い詰めてしまうだろう。
だがAの決意も変わらない。蒼の質問にAは強く頷いた。

「……わかった」

蒼はポツポツと麗と付き合った理由を話した。そして、バラした犯人はモモだということも。

「―――つまり蒼は僕を守るために桐島さんと付き合ってたの?」

モモがバラしたことよりも、自分のせいで蒼が辛い思いをしたことの方がAの中に残った。モモは幼少期のAを知っているから、目立つことが嫌いなことも理解していただろう。それを逆手に取られてしまうとは情けない。

「ごめん…」

「謝らないでよ。俺は正しいことをしたと思ってるよ。大切な人を守るために。……守れなかったけど」

麗がしてきたいじめのことを思い出したのか、蒼の顔が歪む。違う。そんな顔をさせるために謝ったわけじゃないのに。

「怖いんだ。誰かに注目されることが」

それは今まで、父にも言ったことのないことだった。

「注目されるってことは期待されていることと同じでしょ?自分がその期待に応えられなくて、周りに愛想つかされるのがすごく怖いんだ」

だから目立ちたくなかった。初めてからそんな期待させなければ、相手も自分も余計な傷を負わなくて済む。

「蒼はよく僕を優しいと言うけど、そんなことないんだ。僕は卑怯なんだよ。蒼みたいに誰かを守るなんてできないから――――」

言葉を遮って、蒼はAを抱き締めた。

「AがAであるかぎり、俺の想いは変わらないよ。俺はAが大好き。だから、そんなに自分を責めないで」

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埋夜冬(プロフ) - ウェーイさん» 喜んでいただけているご様子ですね!嬉しいです! (2021年7月10日 22時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ウェーイ - (*^▽^*) (2021年7月10日 22時) (レス) id: 600bb56534 (このIDを非表示/違反報告)
トマトジュース - アギャァァァァァァ!!無理尊い、辛い、泣けるンゴ、吐血するンゴ、つかしたんご (2019年9月19日 22時) (レス) id: b4078055ec (このIDを非表示/違反報告)
カナ - (^∇^) (2019年7月13日 14時) (レス) id: 99b9fc8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - カナさん» ありがとうございます!もうすぐ終わりますのでお楽しみに☆ (2019年7月12日 7時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:埋夜冬 | 作者ホームページ:http://uratuku/sounewawawa1  
作成日時:2019年3月5日 23時

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