59歩目 ページ19
彼女はただ、ふふっと笑っているだけだった。
「兄弟の件も恋人の件も、兄さんが言ったんですか？」
「ん〜？兄弟はAから聞いたよ。恋人の方は……私見てたから」
兄弟の件、桃華はAに言われる前から“知っていた”が、あえて言わない。
告白を見られていたと知った蒼は顔を覆い天を仰いだ。きっと心の中で「うっわ最悪」と思っていることだろう。
「まぁまぁそう悲しまないでよ。代わりにいいこと教えてあげるからさ」
蒼は顔から手を離し桃華を見る。桃華は悪どい笑みを浮かべた。
「麗ちゃんに兄弟になるって情報をリークしたのは私だよ」
「ッ、やっぱり！！」
蒼は怒りが沸いてきた。コイツのせいで今まであれほどの我慢を縛られて、辛く苦しい思いをしてきたのだ。
「でも、ああやって麗ちゃんと付き合ってなかったら君たちは付き合ってない」
桃華の声が低くなる。鋭い瞳とそのトーンに蒼はびくりと震えた。
「さぁてと、私は君の質問に答えた。次は私の番。私を呼んだ本当の目的は？」
そう。実は蒼が桃華を呼び止めたのにはもう一つ理由がある。
「気付いてたのか。先輩何者なんですか」
「ふふ、黙秘で。早く答えてよ」
本当は頼みたくないことだ。でも彼女に頼んだ方が手っ取り早い。
「Aがいじめられないように、盾がほしい」
「なるほど。でもその盾候補が麗とつながっていたから不安だと」
そういうことだと蒼は頷いた。
あまりにも「本当は頼みたくないです」オーラを出している蒼にクスクス笑ってから桃華は蒼にウインクをした。
「大丈夫だよ！私もAが好きだからさ！盾になってあげる」
このお茶らけた態度が蒼は気に入らなくて、恐い。何を考えているか分からないから。
「好きなら兄弟のことバラさないと思うけど」
「言ったでしょ。“君たちのため”だよ！もうしない。信じてもらえるとは思ってないから最終的には貴方が決めて」
どうするの？と桃華が目で問う。蒼がここで頷けば桃華という最強のAの盾が手にはいるのだ。だが本当にもうしないのかも疑うところだ。
「駆け引きは苦手だな」
「ウソつき。腹の底でさんざん黒いこと考えてるくせに」
蒼なりに考えを巡らす。この先輩には蒼の黒い部分までバレていた。何かを隠すのは今更だろう。
「…分かった。盾になってくれますか？ミステリアスな先輩さん」
「もちろんだよ。腹黒な後輩くん」
二人は静かに握手をした。
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埋夜冬(プロフ) - ｳｪｰｲさん» 喜んでいただけているご様子ですね！嬉しいです！ (2021年7月10日 22時) (
レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ｳｪｰｲ - (*＾▽＾*) (2021年7月10日 22時) (レス) id: 600bb56534 (このIDを非表示/違反報告)
トマトジュース - アギャァァァァァァ！！無理尊い、辛い、泣けるンゴ、吐血するンゴ、つかしたんご (2019年9月19日 22時) (レス) id: b4078055ec (このIDを非表示/違反報告)
カナ - （＾∇＾） (2019年7月13日 14時) (レス) id: 99b9fc8fa9 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - カナさん» ありがとうございます！もうすぐ終わりますのでお楽しみに☆ (2019年7月12日 7時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作者ホームページ：http://uratuku/sounewawawa1
作成日時：2019年3月5日 23時
