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兎5匹 ページ8

勢いよく保健室の扉が開けられる。彩兎の顔はそれだけで緩んでしまう。抑えるために毎日必死だ。

「おはようございます、天崎くん」

保健室の扉をあんなに豪快に開ける人物は一人しかいない。この学校唯一の不良であり言うことを聞かない生徒ブラックリスト入り、さらに最も関わりを持ちたくない生徒1位の座に君臨している天崎Aだ。そんなAが自分のところに毎日来て一緒に過ごしていることに、彩兎は優越感を感じている。

不良の彼は彩兎のいる方を向き「ん」とだけ言ってソファーに座った。いつも持ってくる鞄には昨日あげた黒猫のキーホルダーが付いている。それを見つけて彩兎の顔はついに緩んでしまった。

「……何とよ」

視線に気付いたのだろう。Aはギロリと彩兎を睨んだ。高校生と言えど不良のAは睨みに殺気が込められているように感じる。しかし耳が赤くなっているのを彩兎は見逃していない。

「いえ、何でもありません」

そこまで言ってしまったら怒って出ていってしまうかもしれない。彩兎は微笑んで流すことにした。Aはそっぽを向いて舌打ちをする。

「ああ、そう言えば」

彩兎は机の下からあるものを取り出す。
それは両手で抱きしめることが出来るサイズに作ってある黒猫のぬいぐるみだ。

「昨日話したやつです。これは保健室用なんですよ。可愛いでしょう」

もこもこした素材なので抱きしめたくなること間違いなしだ。現にAに渡したところ静かに抱きしめていた。

「……これは何と?」

Aは黒猫のぬいぐるみに首輪がついているのを見つけた。深い茶色をしているものだ。どうやらもとから付いていたのではなく後で付けられたもの。Aが首輪を引っ張りながら聞くと、彩兎はにっこりと、いっそのこと恐怖を感じるほど笑った。

「可愛いでしょう?似合うと思って」

そう、似合うと思って買ったのだ。


あの茶色い首輪をAに付けたら、さぞ映えるだろうと。


そんなことに気付かないAは「ふーん」と興味無さげな返事を返した。首輪のことはどうでも良くてもぬいぐるみは気に入ったらしい。何度か抱きしめていた。そういう仕草を自分だけが見ている。誰も知らないAと二人だけの時間。

こんな日々が続かないことぐらい、彩兎は分かっている。分かっているからこそ、繋ぎとめるためにどんなことでもするのだ。

大切で自分を必要としてくれているAといるためになら―――――――――――例え、禁忌を犯しても。

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埋夜冬(プロフ) - 。#vllさん» そうなんですか!?これの発案者は作者のお友達なんですけど、その子がどうしても兎を名前に入れたいって言ってました。ヤンデレ好きなので関係しているかもしれないですね!最後までお読みくださりありがとうございました! (2019年10月25日 23時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
。#vll - 兎系の人はやんでれと聞いたことがあります、彩兎くんの名前と関係してそー。と勝手に考えていました。とても面白い作品でした。♪ヽ(´▽`)/ (2019年10月25日 12時) (レス) id: 01ebef5845 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 紫園さん» どうもありがとうございます!二人とも尊く書けたのからよかったです!方言は私も書いてて楽しかったです!この作品を好きになっていただきありがとうございました! (2019年5月1日 18時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
紫園(プロフ) - 最後までお疲れ様でした!本当に尊い2人です(´;ω;`)方言とかも最高でした! (2019年4月28日 16時) (レス) id: a3fbe17e50 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 李守文さん» 嬉しい限りですありがとうございます!!!私も博多弁書いてて楽しかったです!そして同じように日常で使いました(笑) 今後も作品を出していきますのでどうぞよろしくお願いします!この作品を好きにいただいてありがとうございました♪ (2019年4月27日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年1月26日 16時

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