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兎28匹 ページ31

「貴方がクラスに行くようになって、もしこのまま戻らなかったらと不安になりました。だから考えたんです。――――――閉じ込めておけばいいと」

そして彩兎はこの部屋を見渡した。

「貴方が居なくなるくらいなら禁忌を犯しても構わないと思いました。綺麗な部屋でしょう?昨日大掃除をしたんです。天崎くんが来ても誇れるように。もともと空いていたのでちょうど良かった。今日からここが、貴方の部屋ですよ、天崎くん」

うっとりと彩兎は笑った。この顔は知っている。ぬいぐるみを買ったときなどに見た顔だ。
その笑顔は、彩兎がAを自分のものにするときの顔。首輪の件も何もかも、彩兎がAをものにするためだ。

「で、でも……親とか学校とかはどうすると?」

「学校は私が何とでもしますよ。それにね、天崎くん」

彩兎はAの手に自分の手を重ねた。温かい彩兎の手でAを包み込む。

「誰もいない家に、帰りたいのですか?」

ひゅ、とAの息が詰まった。
彩兎は重ねていたAの手を持ち上げ両手で包む。家族のような温かさを、Aに覚えさせるように。

「ここにいれば私は毎日帰ってきます。ご飯を作って一緒に食べましょう?私も恋人が待っている家に帰って、ただいまと天崎くんに声を掛けたいです」

Aの手が震えている。きっと今、心の中で葛藤しているのだろう。彩兎は一緒に暮らす選択肢しか残したくない。迷っているなら、強硬手段に出ずとも何とか出来るかもしれない。

「好きです、天崎くん。貴方は私のこと、嫌いですか……?」

トス、と彩兎はAの固い胸元に頭を預ける。Aがここに残ると言うために何でもするつもりだ。

「嫌いなわけなか!」

顔をあげるとガシリと肩を掴まれた。「あーもう!」と怒っているような顔をしたAは、落ち着くためか一度息を吐いた。

「好いとーよ。あんたが思っとる以上に、俺はあんたを好いとる。初めて会った日から、一目惚れしたばい。あんたは、俺に優しさを教えてくれたばい。あんたが俺に言った言葉は全部、俺が言われたい言葉だったから、どんどんあんたのことが好いとーて堪らなくなる」

顔を赤くしながらも真っ直ぐ想いを伝えたAは格好良かった。

「同じ気持ちなら俺はもうこの気持ちを隠さんでええとね?―――――好いとーよ、彩兎」

Aは初めて彩兎の名を呼んだ。

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埋夜冬(プロフ) - 。#vllさん» そうなんですか!?これの発案者は作者のお友達なんですけど、その子がどうしても兎を名前に入れたいって言ってました。ヤンデレ好きなので関係しているかもしれないですね!最後までお読みくださりありがとうございました! (2019年10月25日 23時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
。#vll - 兎系の人はやんでれと聞いたことがあります、彩兎くんの名前と関係してそー。と勝手に考えていました。とても面白い作品でした。♪ヽ(´▽`)/ (2019年10月25日 12時) (レス) id: 01ebef5845 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 紫園さん» どうもありがとうございます!二人とも尊く書けたのからよかったです!方言は私も書いてて楽しかったです!この作品を好きになっていただきありがとうございました! (2019年5月1日 18時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)
紫園(プロフ) - 最後までお疲れ様でした!本当に尊い2人です(´;ω;`)方言とかも最高でした! (2019年4月28日 16時) (レス) id: a3fbe17e50 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - 李守文さん» 嬉しい限りですありがとうございます!!!私も博多弁書いてて楽しかったです!そして同じように日常で使いました(笑) 今後も作品を出していきますのでどうぞよろしくお願いします!この作品を好きにいただいてありがとうございました♪ (2019年4月27日 22時) (レス) id: 59284e1a90 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年1月26日 16時

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