願い 27 ページ28
病院から帰ってきて1週間。
Aは朝からバッグに荷物を詰めていた。珍しく出掛けの準備だ。
「珍しいな、Aが支度してるなんて。どこに行くんだ?」
「悪魔も行くんだよ」
「え?俺も?」
それは初耳だ。いや言われなくてもついていく気ではいたが、一緒に行っていいのか?
まさかAから誘ってくれるなんて、とオルバはやや困惑だ。悪魔が一緒に行かなきゃいけないところなのか?いや人間の世界にそんなものはない。では何故俺をあのAが誘ってくれたのだろうか。
「何その顔。別に行きたくないならいいけど」
風邪で頭がおかしくなったのか!?と思ったが返された反応はいつものジト目。あ、良かったいつも通りだ。
「とんでもない!Aが外に出ることに驚いたんだ。どこへ行く予定なんだ?」
「さぁね」
どうやら秘密なようだ。でもAの機嫌が何時もより良い。オルバは考えを巡らせる。
友達……はいないもんなコイツ。メールをしているところも見たことがない。仕事……はそもそも病弱だから出来ないし。何かのライブ……にしては装備品が少ない。ゲームや漫画の発売日とか……ってコイツはスマホゲームしないうえに漫画も熱中するほどのもの持ってない。うぁぁあ気になる!!
悪魔を気にせずAは外へ出て家の鍵をかける。置いてかれそうになった悪魔も壁をすり抜けてついてきた。
「というかお前、体は大丈夫か?外とかでない方が」
「大丈夫だよ。あの場所へ行くって決めた日は体調崩したことないし、気分もいいから」
スタスタと歩いていくAからはいつもの人生を諦めた表情はしていなかった。ますますどこに行くのか分からない。
バスに揺られ、電車に乗り、またバスに揺られる。景色はどんどん緑が多くなっていき道も舗装されないものに変わっていく。
バスを降りて15分ほど歩くとロープウェイがある。それに乗れば、目的地に到着だ。
「何だこれ!初めて見る乗り物だぞ!」
悪魔は初めて見るロープウェイに興味津々で乗り込んだ。「浮いてるのか!?」と横の壁をすり抜け、「いや、引っ張っているのか!」と天井をすり抜けて納得している。
Aも下に広がる森とハイキングコースを見て、ほぅと息を吐く。昔はたくさんの人で賑わっていたが今はめっきり減ってしまった。まぁ、そちらの方が好都合だ。
着いたのは山の頂上。それからまた少し歩く。道もないところを進んでいく。
「ここだ」
生い茂っていた木々が開けたその先は、一面の花畑だった。
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ルティン - はい!応援しています!また読みに来ますね! (2021年8月3日 18時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ルティンさん» 嬉しい限りです!!この作品をこんなに好きになって下さりありがとうございます!これからもっと精進致しますのでよろしくお願いします! (2021年8月3日 16時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ルティン - この作品ほんとすごい!もう3回も読み返しています…!しかも期間を空けて!何度も読みたくなる、素晴らしい作品をありがとうございます!!これからも頑張ってくださいね!! (2021年8月3日 15時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゆきさん» うわぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます!!泣かせたかったので泣かせられたなら満足です(笑)最後までお読みくださりありがとうございました! (2020年7月11日 9時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一言いいですか?...神作者じゃないですか!?貴方様の小説最高すぎるんですよ?!思わず泣いちゃったじゃないですか!...以上、長文失礼致しました。 (2020年7月11日 9時) (レス) id: 1ca0293e4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年12月7日 8時