願い 26 ページ27
Aはぎゅっと自分の胸を押さえた。下を向いた顔があまりにも悲しそうで、オルバは心配になった。大丈夫かと背中をさすってあげたい。どこか辛いかと頭を撫でてあげたい。休ませるために布団まで運んであげたい。
なのに自分は触れられない。悪魔はこちらの世界の摂理に関係してはいけないからだ。
｢だ、大丈夫ですか？体調悪くなっちゃいました？まだ完全に回復したわけじゃないですよね！俺帰りますね！お礼ありがとうございます！｣
うるさいところもすぐに慌てるところも、本当に悪魔そっくりだ。
他人とはあまり話したくなかった。でも悪魔と会ってから、心の内を話してから、自分の中で何かが変わっている。今こうして知らない人と話していても嫌じゃない。
｢こちらこそ。ありがとうございました｣
だからAは久々に悪魔以外の人に微笑んだ。
夕日に照らされた微笑みは初めて見る儚さだった。もともと線が細く気だるげで病弱なイメージがあるAという存在が儚さに拍車をかける。美形であることもさらに上乗せ効果だ。
悪魔が見慣れたそれに上杉が見惚れたのは仕方ない。何せ彼の微笑みは初見なのだから。
｢きれい……｣
｢え？｣
小さい声だったのでAには聞こえなかった。でもオルバには聞こえた。
綺麗だと？当たり前じゃないか。そもそも俺の方が先に綺麗だと思っていた。だいたい何なんだお前は。Aは病院から帰ってきたばかりなんだ。いいからとっとと帰れ。
一気に悪態が心の中で大洪水だ。何故かモヤモヤする。
｢あの！何かあったらいつでも連絡くださいね！力になりますんで！これ俺の連絡先です！｣
上杉は胸ポケットから小さなメモ帳とペンを取り出した。素早く連絡先を書いて破き、Aに渡す。
｢それじゃ！ゆっくり休んでください！｣
｢え、あ、ありがとうございます｣
こんな簡単に連絡先を渡していいのか。それとも僕が知らない間に簡単渡す若者が増えたのだろうか。
と、こんなことを考えないと突然の情報量に頭がパンクしてしまいそうだった。
｢A、とりあえず休もう。疲れただろう｣
｢うん、そうだね｣
寝室に戻り連絡先を机に放りベッドにダイブした。人間の体はどうして横になると疲れが押し寄せるんだろう。
｢悪魔は、本当にこのままでいいの？｣
｢ん？契約のことか？もちろんいいさ。嫌でも願いを聞き出してやるからな。だから離れないぞ｣
｢…そっか｣
彼はもう一度、そっかと言って笑う。
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ルティン - はい！応援しています！また読みに来ますね！ (2021年8月3日 18時) (
レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ルティンさん» 嬉しい限りです！！この作品をこんなに好きになって下さりありがとうございます！これからもっと精進致しますのでよろしくお願いします！ (2021年8月3日 16時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ルティン - この作品ほんとすごい！もう3回も読み返しています…！しかも期間を空けて！何度も読みたくなる、素晴らしい作品をありがとうございます！！これからも頑張ってくださいね！！ (2021年8月3日 15時) (レス) id: bdebe086bb (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - ゆきさん» うわぁぁ嬉しいお言葉ありがとうございます！！泣かせたかったので泣かせられたなら満足です(笑)最後までお読みくださりありがとうございました！ (2020年7月11日 9時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 一言いいですか？...神作者じゃないですか！？貴方様の小説最高すぎるんですよ？！思わず泣いちゃったじゃないですか！...以上、長文失礼致しました。 (2020年7月11日 9時) (レス) id: 1ca0293e4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：埋夜冬
| 作成日時：2019年12月7日 8時
