噂のカノジョ【Ryo.Y】

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『ひまだ』

ゴロンと布団に寝っ転がりながらスマホを見つめる。亮くんがロケで家を空けてから二日目、明日の夜には帰ってくるというのに彼のいない夜は相変わらず慣れない。特別広いわけでもない1LDKの家中がシーンとしていて落ち着かない、彼のいる生活に慣れ過ぎたせいだ。

口先を尖らしてブーブー文句を垂れているとスマホに一通の着信が入りハッとしたがそこには”パパ”と書かれていた。その画面に彼ではないことに少しがっかりしながら、「パパは呼んでないんだけど」と文句を垂れながら電話に出た。

＿「なんだよ〜」

『こっちのセリフだし』

＿「なんだ御機嫌斜めだな、彼氏くんと喧嘩したか？？」

『その彼氏くんが出張でひとりぼっちなんですぅ』

その言葉に父はアハハハと声を出して笑っていて、私もつられて少し笑った。しかし上海じゃなかったのだろうかと思って「どうしたの？」と聞けば何やらガサゴソと音が聞こえた。

＿「カニ食うか？？」

『ああ、上海蟹？？』

＿「そうそう、昨日食いに行ったら美味くてさぁ」

『食べる食べる』

＿「彼氏くんは？？」

『彼氏くんの大好物はカニです』

＿「なんだよ言ってくれよぉ、沢山送ってやるわ」

楽しそうな父親の声に私も「嬉しい！！」と声をあげた。亮くんにも父のことは紹介していないし、父にも亮くんのことは紹介をしていない。ただいうタイミングがよくわからなくて伝えていないだけなんだけど、どうやって説明をしたらいいんだろうなあと思う事が多くなってきた。

というのも亮くんの仕事が増え始めてきて、トモダチゲームや銀魂を皮切りに人気が急増中だからだ。

もしかしたら父ももう彼の噂を聞いてるかもなあ、なんて思いながら父から住所の確認をされて「あってるよ」と伝えた。

＿「楽しみにしとけよ、どでかいのいっぱい送ってやるから」

『あざーっす』

＿「来月あたりには撮影終わって帰るから、そんときに家でカニ食いながら晩酌だな」

『どうせ撮影の愚痴でしょ』

＿「お前は会社の愚痴だな」

お互いが似た者同士である、ケタケタ笑った私たちは「おやすみ」と電話を切った。スマホを確認すると亮くんからLINEで「電話できる？？」と数分前に来ていて、私は頰を綻ばしてすぐに通話ボタンを押した。

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