報告書 NO.01 ページ2
Aの名前が高々にあげられる。
周りからは祝福と疑問の声があがる
Aは忖度(そんたく)が発生してしまったのではないかと、内心焦りつつも100名ほど、縦横寸分の狂いなく並んでいる同期の前に立った。
5番目に呼ばれたAは、自分ではとりわけ運動が秀でている訳でもないし、技術だって人並み程度。これといった特技もない、皆と変わらない人間だと思っていた。
しかし周りの同期達は薄々勘づいていた。
Aの本名はナイトレイ
この名前を知らない者は居ないであろう。なにせ、内地どころか、この壁で知れ渡っている医者の名前なのだから。
だから、ナイトレイと呼ばれる者が兵団に入団するとなった時、2、3ヶ月は訓練兵の中でどよめきが走っていた。
｢お前何使ったんだ？｣
｢何も使うわけないだろ。1番私が驚いてるんだから｣
Aの隣に立つ大柄な男が、意地悪に聞いてきた。出来ることなら、憲兵団に入団したいと思っている他の同期に、この場所を譲りたいぐらいなのに
そう本音を言えば更に顰蹙(ひんしゅく)を買うと思い、それ以上は何も言わなかった
式が終わり自室に戻れば、ルームメイトがこう尋ねた
｢勿論Aは憲兵よね？羨ましいなぁ〜｣
｢や、私は……｣
｢え、憲兵じゃないの？じゃあ駐屯？｣
｢それもなぁ。実は調査兵団がいいかなって｣
その子は目を丸にさせてしばらく微動打にしなかった。一般論で考えれば、Aの考えはありえない事だ。
上位10名のみが許されている憲兵への道を、自ら1番危険な調査兵へと進もうとしているのだから。
｢それに私色々と約束したから｣
..................................
所属兵団決定の日、各希望団の元へ足を運ぶ訓練兵達
やはり一番人気は駐屯兵団。憲兵団は9人。微妙な人数のラインを付いてくる調査兵団。
死に物狂いで頑張ってきたけれど、開拓地へと戻される者も居た
｢ここに集った勇敢な兵士達。心より歓迎する｣
調査兵団団長エルヴィン・スミスが壇上に上がり、毎年恒例となっている新兵脅しが始まった。
ここで振るいにかける、と本人は言っているが調査兵団の人数が少ない理由の1つであろう
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作者名：暁月 | 作成日時：2018年9月30日 0時
