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昨日バスに乗った時に見た、憧れで尊敬する選手の涙
1人になるまで絶対に弱さを見せたくない泣きたくないと思っていたのにそれを見た瞬間、想いが溢れて止めようと思っても止められなかった
A(泣くな、泣くな、なんで私が泣いてんの)
夜部屋に入ってからもずっとずっと声を殺して泣き続け、みんな食堂に移動していたのにも関わらず
Aは部屋にこもり続けた
ただでさえ試合後にあれだけ泣いたのに、今こんな状態で先輩たちの顔を見たらもっとさらに泣き出しそうで
怖くて怖くて、足が動かず
A(自分が試合に出たわけじゃないのにこんなに悔しいなんて知らなかった)
A(自分以外の誰かが戦って負けてこんなに悔しいって)
思う存分声を上げて泣くことが出来ず、想いを吐き出すことが出来ない不快感から
本棚の本を全部出したり棚を蹴っ飛ばしたりベッドのシーツを引っ張り剥したり
とにかく自分でも驚くくらい物に当たり、気がついた頃には部屋の中が驚くほど荒れていた
A(もう…昨日のことになっちゃった)
A(だから何?そう簡単に…忘れられるはずがないでしょ、自分の事のように悔しくてたまらない)
物音がすごかったと言われて初めて自分が荒れ狂っていたのかわかっては冷静さをようやく取り戻せた気がした。
誰かと顔を合わせることも
誰かの優しさに触れるのも
誰かの声を聞くのも全てが嫌で仕方ない
それが全て今のAにとっては苦だった。
A(部屋…片付けないと)
A(でももう、何にもやる気が出なくて空っぽ)
今みんなはどうしてるのか、気になるけれど確認する気にもなれない
A(もうずっとこの調子だ、練習ないからって…ズルズルと)
選手と比べたらそんな大したことないかもしれないが自分の事のように悔しくて
それでいて…あのデットボールは衝撃的だった。
A(駄目だよ、こんなんじゃ何も…いつまで経っても変わりやしない)
A(しっかりしなきゃ、栄純はきっともっと悔しくてあのことを気にしてる私が今度は支えなきゃ)
ボサボサになった長い髪
束ねる気にもなれず、食事をする気にも慣れずただずっと床に座ってはベッドに寝転びそれの繰り返し
A(しっかりしろ、今が1番大事な時期だって私だってわかってる)
A(こういう時こそ踏ん張らなきゃ)
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作者名:ちあき | 作成日時:2020年5月22日 21時