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最後まで鳴の放った打球を追いかけ続けた伊佐敷はその場で声を殺すように泣き崩れ
同じように追いかけた白州も、そして川上も歯を食いしばるように涙を流し
増子と倉持は呆然とした様子でありながらもその目からは涙が零れ落ち
ベンチにいた亮介も丹波も声を殺し、涙を流した。
クリス「沢村」
目の前の光景を何も声を発さず見ていた栄純にクリスが声をかけた。
クリス「整列だ」
整列しなくてはならないと
整列しなくてはならないということは、正真正銘この試合の全てが終わりを告げたことを指す。
哲「さぁ、並ぼう」
哲「みんな立て」
涙を零す春市の背に手をあてながら
たった1人泣かずに声をかけていたのは主将の哲のみ。
哲「ちゃんと整列しよう」
哲は”泣かなかった”と言うよりは
泣くのを”堪えていた”と言う方が正しいのかもしれない
悔しさと悲しさに包まれる青道とは対照的に勝利への喜びの声で溢れる稲実
試合の終止符となる決定打を打った鳴は
鳴「よかった…」
鳴「あれだけずっと…でかいことばっか言ってきたから…勝ててよかった」
声を絞り出すように涙を流しながら勝ててよかったと言葉にした
誰よりも自分の言葉に責任を感じていたのは当然鳴で、ずっとその言葉の責任の重さと彼は戦っていたのかもしれない。
この言葉を聞いた原田も静かに涙を零す。
A(泣いちゃいけない、絶対この場所では泣かない)
A(この場所で…1番悔しい思いをしているのは少なくともこの場所で見てた私なんかじゃない…!!)
この光景を目の当たりにしたAは必死に泣くのを堪えていた
今1番泣きたいのは、悔しいと言葉にしたいのは自分ではなく
最後の最後まで戦い続けた20人の選手と
そして…3年生だと。
A(泣いちゃいけない、絶対に隣には…貴子先輩だっているんだから)
A(私の気持ちと選手のみんなと3年生の気持ちは全然違う)
気を弛めてしまっては
もうどんどん、溢れ出てきそうになった。
悔しいという言葉
なんで、どうしてという言葉
それでも負けは負けで勝ちは勝ち
どれだけ泣いても叫んでも結果は変わらない。
A(絶対に泣くもんか、引っ込め、引っ込め、引っ込め…!!)
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作者名:ちあき | 作成日時:2020年5月22日 21時