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帽子をかぶり直し
前を向いた栄純の顔はやはり明らかに様子がおかしいようにしか見えない。
栄純(厳しく…もっと厳しく…)
A「ダメだよ栄純そんなんじゃ…そんな顔しないで」
もうそこにはいつもの栄純がいないように思えた。
初めての大舞台、初めての大事な場面
そしてそれを任された緊張と責任感
それらが大きく作用し今の栄純の状態を作ってしまったのだ
あとアウト1つで勝負は決まる、会場には大きなあと1つコールが響き渡る。
A(誰も気がついてないのかな、マウンドに立つ栄純の様子が…表情が強ばって明らかにおかしい)
Aは目がいいからかそれともなんとなくか今の栄純がプレッシャーからか強ばった表情をしてるように見える
このまま投げてしまったらきっと…
A(下げるとまではしなくてもいいからタイムを取るべきなんじゃ…)
自分が捕手だったのならそうしてる
別に悪い言葉を言われてるわけじゃないのに
その言葉を耳にするのがとてもじゃないけど辛かった、耳を塞ぎたくて仕方がない。
周りは皆、あと1つだと声を上げているのに、他のマネージャーたちは皆涙ぐんで試合を見ているのに
まるでAだけは栄純と同じような顔をして試合を呆然としたまま見ているだけ。
A(ねぇ栄純、気がついてよ、どうしていつもいつも気がついてくれないの？)
A(おかしい、なんでこんなに私が不安になってるんだろう逃げないで戦ってるって分かっているのに…)
心臓がギュッと凄まじい力で握りつぶされてるんじゃないかと思うほど苦しく、息ができなかった
頑張っていないともう、涙がこぼれ落ちそうになる。
御幸(コイツもベースに…)
御幸(注意しなきゃいけないバッターだけど1発はない)
それでも試合は止まらない、待ってくれなどしない
打席にはもう次の打者である白河が入っている。
御幸(沢村のボールに力はあるし、ここで決められたらベスト)
御幸(コースは甘くていい、腕を振り切れ！！)
腕で隠れていた顔がまた見える
緊張の色がハッキリとわかる、その表情
それが見える度に胸が苦しくなる。
栄純(気持ちで負けるか)
栄純(ここで逃げ出せるか！！)
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作者名：ちあき | 作成日時：2020年5月22日 21時
