【◇】群 青 エ ー ス . 9

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御幸(まさかここにも持ってきてるとは思ってなかったな)







あの時の笑った顔は

今でもよく覚えている。

あんな風にいつも素直だったらかわいいのに。









A「ふひゃ………」


御幸「ふひゃ…？」








つい我慢できず

人差し指でツンと頬をつついたら

いつもと違うちょっと間抜けな声で意味のわからん言葉を口にした。

色気のいの字もない。









御幸(コイツ……ふひゃってなんだよ、ふひゃって)








無防備で、部屋に男子がいるとも思わず

1度寝たらなかなか起きない。

こんなの好きと自覚してしまったら

手を出したくなってしまう。









御幸「こっちは必死になってんのに、人の気持ち考えろっつーの」









無自覚と無防備というのは本当にずるいものだ。

あの時グイッと腕を引っ張った時に


最終的にはAから腕を回してきた。


あの時、ちゃんと、もっとしっかり


ちゃんとした場面で出来ていれば。









御幸(考えてること全部Aのこととか、結構まずいな)









自覚してしまったら

そんなものなのだろうか。

よくわからない。

でも、大切にしたいって気持ちははっきりとくっきりとしてるわけで。









御幸(やめよ、こいつ見てるとなんか調子狂う)









いつだか鳴にウブだとか言ったけれど


自分も人のこと言えていなかった。


だって今、目の前で寝顔を見ただけで


今まで感じたことのないような胸を締め付けられる感覚と、我慢しなくてはいけない気持ちが強まって


自然と頬に熱が集まってしまった。


それってつまり、そういうことなんだ。









御幸(手出したら絶対駄目、我慢しろ絶対駄目だ)


御幸(もし起きでもしたら取り返しがつかないどころか、話してくれなくなる)









半分焦った気持ちで

慌てて顔を逸らすと

小さなテーブルに置かれたノートが今度は目に入った。








御幸(もしかして…相当ガリ勉？)








まだ熱が引かない頬とらしくないくらい緩む口元を

誰も見てないのに無意識に隠しながら

多少の罪悪感を感じつつノートを覗き込んだ。








御幸「………なんだ、ガリ勉ってわけじゃないのか」








その開かれたまんまのノートに書き込まれていたのは

今日の練習メニューのことばかり。








御幸(ガリ勉っていうよりは…野球専門のガリ勉か)

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