【◇】群 青 エ ー ス . 9

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甲子園予選でのこと。

会場は時間関係なしに、多くの人で溢れている。









御幸「早くしねーと置いてくぞ」


A「待ってよ！」









初めて球場に来て

トイレの場所も分からないAは

偶然にも同じタイミングでトイレに行こうとしていた御幸についてきったのだ。









御幸「お前本当に小さいな、寝る子は育つって言うだろ？ちゃんと寝とけよ」




A「失礼なこれでも女子の中では大きい方だよ、一也が大きすぎるの」





御幸「俺は運動もしてるし睡眠も食事もしっかりしてるし」




A「あのね、それだけで身長がぐんぐん伸びたらこの世はみんなノッポさんだからね」







これだけの人で溢れていたら

ほんの少し目を離しただけでもすぐ迷子になってしまうだろう。

しかもAは御幸と違って一般の人より身長が上というわけでもないので目立たない。

むしろ一般の人はともかく、高校球児の軍団に紛れれば1発で分からなくなってしまう。









御幸「それと、トイレの場所くらい覚えとけ俺がいなかったらどうしてたんだ」


A「栄純とかみんながいるし」


御幸「それでも沢村や俺たちがいなかったら？」


A「稲実とか…色んなチームの人に聞く」









まだ1年生だから

余計な行動をすれば即迷子。

しかもAはマネージャーであるから迷子になったらチーム全体に迷惑がかかる。

そして試合まで間に合わなかったらAの応援もないというわけだ。

誰とは言わないがそれは納得いかないことだろう。









御幸「鳴とかいなかったら？白河かカルロスなのか？」


A「そうだね…あと同じ学年の子とか」


御幸「とは言ってもよ、お前稲実くらいにしか他校の知り合いしねぇじゃん」


A「だからそういう時はそこら辺の人に…」








危機感のないやつとはまさにこのこと。

Aには当然自覚症状のじの字もないわけで、すれ違う野球部男子の人達が振り返ってAを2度見したり、噂したりしているのは

全く知らない。

みんなで集団で移動してる時はある意味別の意味でも鉄壁な二遊間組が睨みを利かせてるのも知らない。









御幸「その方法はやめとけ、いいことねーから」


A「いいことって…トイレに行けるんだからいいじゃん」



御幸「トイレの場所くらいおぼえろ」

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