姫事―ヒメゴト― 【ARS】 (ページ13)

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メールの差出人は、お兄ちゃんだった。
そうと分かれば、私は即座にケータイのパスコードを解きメールを開封した。

お兄ちゃんからのメールはやっぱりいつも通り短文。

“おはよ、お先に仕事行ってきます。いつも通り部屋で待ってるから。”

たったこれだけの文章なのに、じわじわと心の中で嬉しい気持ちが膨らむ。

本当に今日会えるんだ。

私はお兄ちゃんに“了解！”とだけ送り、食卓についた。

どこかでまだ夢を見ているかのような気持ちのまま、うっかり少しだけ焦がしてしまったトーストをかじり、目がぱっちりと覚めるぐらいの濃厚な苦味のコーヒーを一口飲んだ。

こんなにのんびり、ゆっくりとした朝食の時間なんていつぶりだろう。
いつもは出発30分前に目を覚まして大慌てで準備を始めるのに、今日は出発まであと1時間弱もある。きっと七海さんもびっくりするだろうな。

少し外の新鮮な空気を取り込もうと、リビングの窓を開けると春の暖かい日差しと共に穏やかな外気が室内に入り込み、風が優しくカーテンを巻き上げる。

今日も笑顔で頑張ろう。

私はすぅっと深く息を吸い込み、
よしっと気合を入れた。

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