[wrwrd]青に溶ける (ページ42)

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外に出て、肺に満たされた埃っぽい空気を外の空気と交換しつつ、ぐいっと体を伸ばして伸びをした。

凝り固まった身体が一寸音を立てた。からりとした外の空気は、先程の空気とはあまりに違い過ぎて、息苦しささえ感じてしまう程だった。

矢張り、やられた場所から可成り近い場所だ。一寸した物置のような場所になっている、そんな処だ。少し歩けば、ポイントに戻れるはず。

そう思いながら、歩きかけて、はたと気が付いた。

否、気が付いて居た事なのだが、思い出した。

今、何時だ。

閉じ込められた時以上に、顔から血の気が引くのが解った。

……彼奴、絶対生殺しにしたるからな！！

今迄、「仕返しとか其処迄考えてない、まあ機会があれば報いは受けさせる」くらいだったが、もう我慢ならない。

実生活、然も多方向に迷惑の及ぶ仕事にまで範囲が及んだのだ。

然るべき報いを受けさせないと気が済まない。

まあ、そんな方法を思いつきもしないのだが。

パンツスーツの胸ポケットから小さなアンティークゴールドの懐中時計を取り出して、苛立ち気味にぱちんっ、と開いて時刻を確認する。

上司を馬鹿にできない程の時刻にはなって居た。まあ、太陽の昇り具合からして、そんな気はして居たのだが。

「……だよなあ……」

思わず独り言ちた。溜息を多分に含んだ言葉は、湿っぽく廊下に落とされて消えて行く。

親切にも、其の人がその部署とか、まあそうじゃなくても良心的な別の誰かの所に、遅れる、とか、言ってくれやして居ないだろうか。いや、そんな希望的観測、天に黄金の城を建築した方がまだ現実感があると言うものだ。

かといって、「一寸気絶させられて閉じ込められてまして、遅れました」と言うのか。

……云えるわけがない。いや、云って終いたいが、何の意味も無い。

監視カメラ外でのルートを通って行われた事なのだろうから、証明する人が居ない。証拠がない話に付き合う程、うちの幹部は暇ではない。……筈。

如何し様、もう本格的に逃げたい……。

何でこんな目に遭わなければいけないのだろう、と言う、抑え込んでいたやるせない感情が溜息となって体現される。

余程そんな事を思ったが、妄想に浸ってももう仕方がない。もう成り行きだ、なる様にしかなるまい。

懐中時計をしまう。そうして、怒鳴り声と失望を覚悟の上で、自分の部署へと足を向けた。