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どうやら自分は､スパイの疑いがかけられていたらしかったが､あの一連の出来事でソレは晴れたらしい｡
ギギ､と呼ばれながら頭を撫でられるのは､存外悪くなった｡
ただ､あの国の知っているだけの情報を欲しいとガラヴァが言っていたので､定期的に此処に来るようにはなるらしい｡
自分に関する会議が終わると､自分はヴィリスと共に馬車に乗った｡
因みに髭男はカルブと言うらしい｡
「これから行くのは､私の館だ｡そこには執事が1人､侍女が1人､コックが1人だ」
義手義足が入っているであろう箱を抱えながらヴィリスの話す内容を聞いていた｡
馬車の窓から見える景色は､戦争とは無関係の､緑が何処までも続く長閑な場所だった｡
「ーそして､弟が15人いる」
「…？！」
思わず2度見して固まる｡
15人？ヴィリスの母親は何歳だ？
「と､言っても｡君のように保護した子達何だけどね｡多分､君とも歳は近い筈だ」
「…」
成程､戦争孤児か｡
このご時世､戦争で身内を失う子供は多い｡
それらを軍人や人売が保護､または攫い金にするか軍人にするか｡
それが､当たり前だった｡
「皆仲がいいからね｡きっと君もすぐ馴染める」
光に照らされ､赤が見える虹彩が輝く｡
その言葉に､もし無垢で普通の子供であったら期待を胸に膨らませるだろう｡
だが､自分は違う｡
疑う事を忘れてはならない､味方などいない､自分を守れるのは自分だけ｡
それが､自分の"普通"｡
「…」
「…さあ､そろそろ着くぞ」
その言葉に､ひょいっと窓を覗く｡
緑の丘の向こう側に､晴れ渡った空と､太陽の光を受けて輝く海が広がっていた｡
思ったより､ギギは聡明らしい｡
何を言っても､必ず反転した瞳には疑心が浮かび上がる｡
それが､この子にとっての当たり前だったのだろう｡
『ギギは心を開かない』
『…何故､そう思いになるのでしょう､カルブ殿』
ギギが他の将校方に構われている時､カルブ中将はそう呟いた｡
思わず聞き返したが､聞かなければよかった｡
『特攻兵ならば､わざわざ人を信用させるような心は育ませない｡θ国は､そういう国だ』
『…』
『あの子は親を知らない､故に愛も､温もりも知らない｡子持ちだからこそだが､それが分かるよ』
彼の優しげな緑眼が､悲しげに細められた｡
其れが､今身に沁みて分かった｡
この子は､"何"も知らない｡
普通の子なら知っているものを､何一つ知らないのだろう｡
それでも､
窓の外を見つめる瞳の輝きは
本物だと､信じたかった｡
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作者名：東の番長 | 作成日時：2019年6月3日 7時
