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急遽与えられた義手義足は､思いの外動かしやすい｡
いつもの義肢が入った箱を抱えながら馬車から降りると､目前に広がっていたのは大きな館｡
それも大きな建物を中心に周りに小さな離のような建物もあった｡
一言で言えば､でかい｡
「さぁ､こっちだ」
右手を取られ､導かれるままに歩く｡
何かの蔦で飾られたアーケードを通る｡
葉と葉の隙間から太陽の光が差し込んできて､足元や自身の体を所々照らしている｡
そこを抜けると､黒塗りで金の呼鈴らしき鈴がぶら下げられた扉の前に出た｡
ヴィリスが鈴から垂れている紐を引くと､思ったより軽やかな音が大きな音で響く｡
すると､扉が内側から開かれる｡
「ヴィリス姉！お帰んなさい！」
「ただいま､皆いるかい？」
「おるで！て､其奴…」
「…」
まるで蜂蜜みたいな瞳だ｡
琥珀､だったか､それと同じ色の瞳だ｡
黄色とも､金色とも違う色だ｡
「この子を紹介したい｡伝えてくれないか？」
「分かった！」
手を引かれ中に入る｡
これまた広い玄関だ｡
ふと､視界の端に映ったソレが気になった｡
「…」
「ギギ？」
雫を反対にしたような形の宝石？の周りに銀や金の装飾が施されている首飾りに見えなくもない飾り｡
そこに鎮座しているだけで､存在感を放っているこれを､自分はどこかで見た事がある｡
でも､何処で？
「ギギ､どうしたんだ？」
「…ﾌﾙﾌﾙ」
何でもないと言うように首を振ると､ヴィリスは少し首を傾げてまた手を引く｡
木の匂いが鼻につくが､嫌な感じはしなかった｡
「ここに､私の弟たちがいる｡これから､君は私たちと家族になる」
家族｡
そんなもの､要らないのに｡
いや､自分に､在ってはならないもの｡
思わず､箱を抱える腕に力が入った｡
「ー皆､ただいま」
「「「お帰りなさい！」」」
15人の子供と､1人の妙齢の男､初老の女､そしてヴィリスと同じくらいの男がそこにはいた｡
壮観だった｡
「今日から､新しい家族になる子がいる｡ギギ」
「…」
視線を彼らの顔から下が見えるぐらいに上げ､様子を窺う｡
殺意も､敵意もない｡
あるのは､興味､好奇心だった｡
「この子はギギ｡今回の戦争で保護させてもらった子だ｡話す事は出来ないが､意思疎通はできるから､そこは心配しないでくれ」
「…ﾍﾟｺ」
取り敢えず､軽く頭を下げておく｡
大勢の前にいるのは嫌なのに｡
どうしてこうも面前に晒されなければならないのか｡
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作者名：東の番長 | 作成日時：2019年6月3日 7時
