美しき人の名は太宰。【文スト】

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と、まぁ押し切られて今大変可愛らしい服を着せられて街を歩いているのだけれど…。
…姐さんといい、与謝野先生といい、ナオミちゃんといい、そんなに私にマトモな恰好をさせたい物なのだろうか。

最終的には事務員の春野さんまでのってきて、ばっちり化粧まで施されてしまった。
偉く可愛らしくなった顔をショーウィンドウに映してみた。

…嘗て毒々しいまでの紅色が引かれていた唇には優しい桃色が引かれていて、時代の流れを感じさせた。いや、この場合は私自身の変化かな？

くるんとカールした睫毛が私が目を閉じる度に揺れる。

ローヒールのぺたんこ靴を鳴らして歩く。
少しだけ、心が軽くなってくる。
私らしくもなく、くるんと、回ってみたりもした。ふんわりスカートが広がり、耳に付けたアクセサリーがさらりと音を立てた。


「…あは」


無意識に洩らした声は気の抜けた笑い声で、それだけでも、嘗てでは考えられないようなものだった。


ねぇ、織田作。世界はこんなに素晴らしい物なんだね。


そう心を弾ませ乍、目的も無く歩いていると、ある裏道の入口付近に見覚えのあの趣味の悪い帽子が見えた。
…任務終わりだろうか。酷く疲れた顔をしている。


そう言えば西方の抗争に駆り出されていたと零してたなぁ。
五大幹部を駆り出す程の抗争と言えば物凄い規模のものだ。それはそれは疲れる事だろう。
たとえ、中也だとしても。


あ、良い悪戯を思い付いた。
うふふ…これなら中也は驚くよね。


脳内で思考を巡らせて気配をふっと消す。
姐さんに叩き込まれた暗殺関係の技術は万全で、隙がない。


という訳で、気配を消すのもお手の物、なのである。


そして其の儘背後に立って…抱き締めちゃえ。
中也もきっと、驚くと容易に予想がつく。


「ちゅーやー！」


ぎゅっ、と抱き締めた状態で名を呼んだ。
すると面食らった様子で目を白黒とさせていた。まあ、普通に驚くよね。


「同僚の女の人に可愛くして貰っちゃったよ。ね、私、凄い可愛いでしょ？」


可愛いを全面に押し出して会話(尚今の所一方通行)をしていると、中也がぴくり、と動いた。
硬直してたんだね…、まあ敵襲だと勘違いしそうだから、仕方ないか。


「…おい、太宰」


徐に口を開く中也に抱き着く力を強める。
振り払われる…？それとも可愛くないって言われる…？
ああもう、何方にしても考えたくないなぁ。

ーー
続きます。
作者にファッションセンスが無いので詳しい服装の説明はしません。すみません…。

・→←太宰が可愛い服来て町を歩いてたら中原に会った話

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