愛しき喰種【東京喰種】

#17 貴方side ページ18

芳『要件は、その子の事だね？』


一瞬、目が合ったような気がした。
でも、この人が何を考えているのかはわからない。


ウ『はい、少々お時間よろしいですか？』


ウタさんは昨日から今に至るまでの経緯を
３人に事細かに話した。

その間私はというと、カウンター席に座りながら
視界に映る店内を見回していた。
喫茶店になんて入った事が無かったから、何もかもが目新しかった。


私とは違うって事は、やっぱり…喰種…なのかな？



そんな他愛もない思考は一瞬にしてかき消された。



**《次のニュースです。
昨夜、東京都新宿区のアパートにて、親子とみられる女性一人と男児一人の遺体が発見されました。》


ガタッ！！！


椅子から無意識のうちに立ち上がり、片隅にあったテレビの画面を流れるニュースから目が離せなくなった。


**《遺体で発見されたのは、この家に住む柳瀬澪子(れいこ)さん(44)と長男の優都くん(５)で、また、長女のAさん(13)の行方が分からなくなっています。遺体の損傷が激しい事から、喰種の犯行と見て警察と喰種対策局は捜査しているということです。》


貴「あっ…ぁ…」


あの光景が。


血に塗れた床

優都の笑顔

緋く輝く…あの瞳が


一瞬にして私の脳裏に蘇った。


女性『…まさかこのニュースって…』


フラッ


ウ『Aちゃん？大丈夫？』


倒れかけた背中を支えてくれる声に、
私は答えられなかった。

頭がズキズキと痛み、意識が朦朧とする。


**《…彼女は…》

貴「…っ⁉」


こ、この声…


**《生徒会の役員同士であり…友人です…》


画面の向こうには、誰よりもそばに居て欲しいのに
今一番見たくない親友…
…稔の姿があった。


**《凄く責任感が強くて、真面目で…私はいつも助けてもらってばかりでした…
昨日もいつもみたいに一緒に帰って…またねって…
》

貴「っ…ぁ…」


鼓動が全身を駆け巡る。


**《私は…まだあの子が居なくなったなんて信じられません…いいえ…信じません
あの子の…Aのためなら私は何だってします…
だから…》


昨日の惨状と稔の笑顔がチカチカと瞬き、消える。


ウ『Aちゃん！』



**《A…無事に戻ってきて…


…お願い………》



貴「………。」


私、は

どう、したい、の


男性『ちょっ!?』

女性『しっかりして!!』



わたし…





視界は呆気なく暗転した。

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