愛しき喰種【東京喰種】

#16 貴方side ページ17

暖かな日差しが頬を撫でる。

不意に、肩周りを包む温もりに気がついて目が覚めた。

目の前には、目鼻立ちの整った……男の人？


貴「…うぇっ⁉」

ウ『ん…おはよう。Aちゃん。』

貴「…お、おはようございます…ウタさん。」


そうだ…私は昨日この人に助けられて…

と、そこまでして
温もりの正体が自分を抱き寄せているウタさんの腕だという事に気がついた。

考えてみれば、男性と一緒に眠るなんて初めての事で無意識のうちに顔が火照る。


ウ『ん？どうかした？』

貴「い、いえ何でもないです！」

ウ『ふっ…そっか。』


思わず上ずってしまった声が恥ずかしい…。

時刻は7:30。
いつもなら、朝食と弁当を作っている頃だ。


ウ『今日は20区のあんていくっていう喫茶店に行こう。これからの事も色々相談しなくちゃいけないしね。』

貴「わかりました。」


とりあえず、身支度を済ませた。
ウタさんは全体的に黒っぽい服装にサングラスを
かけている。

そのサングラスで瞳を隠すのか。
なんて事を思いながらウタさんの家を出た。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

しばらく歩くと、落ち着いた雰囲気の喫茶店に到着した。

道中、すれ違った人に怪しげな目で見られたのは
ウタさんの容姿からか、中学生である私が平日に
私服で出歩いているからだったんだろうか。
恐らく、両方だろう。


「あんていく」


目の前の看板には、そう書かれていた。
見た所普通の喫茶店の様だけど…


ウ『ここがあんていく。
見た目は普通のお店だけど、経営者が君のような人間とは違うんだ。』

貴「えっ、それって…」


ウタさんは悪戯っぽく笑って脇の階段を上る。
少し暗い階段は別世界への入り口のような気がした。

ドアに掛かるプレートには【closed】と刻まれていたが、ウタさんは躊躇う事なくドアノブを回す。


カランカラン…


軽やかなベルとともに、
ふわりと珈琲の香りに包まれる。


？『いらっしゃいま…あれ。』

？『おや、ウタ君。久方振りだね。』


そこにいたのは、鼻の目立つ若い男性と
初老に差し掛かろうかという位の男性、そして
ショートカットの美人な女性だった。

"君のような人間とは違う"
というウタさんの言葉がよくわからない程、
全員普通の人に見えた。

だが、私を見た途端、３人とも少なからず
驚きの表情を浮かべたように思う。


ウ『おはようございます芳村さん。』


芳村、と呼ばれたその男性は
少し間を置いてから口を開いた。

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