検索窓
今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:149,019 hit

*2 ページ4

「大丈夫…?まだ吐けるんだったら吐いて。楽になるから。」

僕がそう声をかけると、Aは涙目でうなずいた。
背中をさすって、タオルで額に浮かんだ汗をぬぐう。

「…おさまった?まだ気持ち悪い?」
「……だいぶ、良くなってきた。ごめん……」
「なんで謝るの、僕は大丈夫だから。ベッド戻って寝てなさい!」
「…うん。ありがと………」

ありがとうと言われた瞬間、胸がきゅうっと締め付けられるような感覚を覚えた。
泣きそうになって、Aから目をそらす。
何も知らないAは、少しふらふらしながらベッドに戻っていった。

「…う…」

僕はその場に座り込んだ。
Aにありがとうなんていわれたのは、一年以上前だ。

うれしかった。

会いたくて仕方なかった。本当に好きだった。
Aが泣いているのなら慰めて、笑ってくれるならなんだってした。

なのに。

Aの隣には、いつの間にか知らない男がいた。

Aはいつもその人の隣で笑ってて。
いつもの明るくてかわいい笑顔じゃない。 焦がれたような、そんな顔。

やめてよ、Aから離れて。僕は、Aのそんな顔、知らない。
なんで僕じゃないの。どうして、僕が知らない顔を他の人に見せるの。

心がつぶれそうだった。
毎日のように泣いた。涙が枯れるまで、気が済むまで。
それでも、Aが傷ついたときに慰めるのは僕の役目だった。
頼られたらうれしくて、Aが笑えば僕だって笑顔になってて。

そんなとき、Aがその男の人と一緒に住むと言い出した。

Aのお母さんとお父さんや、友達はみんな大反対だった。
だって、あまりにもAの扱い方がひどかったから。
僕が一番よく知ってる。
それでもその人と一緒にいるときのAが幸せそうだったから、僕は止めなかった。

でも。

家を出ていくとき、Aは僕にこう言った。


『もう、私に会わないでね。』って。


僕の目の前が真っ暗になった。
なんで?だめなの?もう二度と?
そんなのいや。耐えられない。待って、おいていかないで、はなれないで。
そう言ってAに縋りたかったのに、身体は言うことをきかなくて。
Aは最後に嘲るように僕を見て笑ったあと、そのまま彼のもとへ走っていった。


それからほんとうに、Aに会うことはできなかった。

ぬくもりは→←なくしてしまったもの。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (229 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
549人がお気に入り
設定タグ:まふまふ , 恋愛 , 歌い手   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

夕焼涙雫(プロフ) - 栗原 真白さん» 面白かったですよいー(*ゝω・*) (2018年9月23日 6時) (レス) id: 76522a65f0 (このIDを非表示/違反報告)
栗原 真白 - 夕焼涙雫さん» ほ、ほんとですか…?!嬉しいです、ありがとです…!! (2018年9月22日 19時) (レス) id: 0170d3c859 (このIDを非表示/違反報告)
栗原 真白 - Canpasuーキャンーさん» ありがとうございます(*>ω<*) (2018年9月22日 19時) (レス) id: 0170d3c859 (このIDを非表示/違反報告)
夕焼涙雫(プロフ) - 完結じゃー!時間がある時(=休日)に読み返そう (2018年9月20日 6時) (レス) id: 76522a65f0 (このIDを非表示/違反報告)
Canpasuーキャンー(プロフ) - 完結(?)お疲れさま!そらるさんの次回作、楽しみにしてるよ! (2018年9月19日 20時) (レス) id: 1cab1691ff (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:青瀬真白 | 作成日時:2018年6月26日 6時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。