我が儘 ページ10
折原さんと抱擁して、どれ位の時間が経っただろうか。ふと私は我に返る。
(名前呼ぶだけで泣くとか情緒不安定過ぎるよね…？！)
更に突然告白するなんて、折原さんに引かれてもおかしくない。優しく抱き締めてくれた折原さんはやはり格好良くて、素敵な人だ。
「Aちゃん」
『っはい…！』
「んふふ、そんな緊張せぇへんでええよ」
突然折原さんに呼ばれ、ビックリしてしまった私は思いきり身体を揺らした上に裏返った声で返事してしまった。折原さんは上品に笑いながら、私の髪を撫でてくれる。
「この後、どうしよっか？」
『この後…』
折原さんの言葉を繰り返す。この後、何かあったっけ…？と一瞬本気で考えてしまう。そしてすぐに、私たちのこれからの行動についての問いかけだと気が付いた。
「Aちゃんは何か予定ある？」
『予定…は無いですけど、姉には晩御飯までには帰る、って言っちゃって…』
姉は晩御飯の支度をもう始めてしまっているだろうか、と頭の片隅で考える。思考を飛ばしていた私は、折原さんがどんな表情をしていたかなんて知らない。
「…じゃ、帰ろうか」
『え…』
「Aちゃんのご家族に心配をかけるわけにはいかないからなぁ」
そう言って朗らかに笑う折原さんを見て、ぎゅっと胸の奥が締め付けられるような感覚に陥る。
「ほな、そろそろここ出ようか？」
『…いや』
「え？」
『もう少し…もう少しだけ…千羅さんと、いたい…です…』
確かに姉は大切だ。でも、それと同じかそれ以上に折原さんも大切だ。だから、あっさり離れようとする折原さんの態度に寂しい、と思ってしまった。
立ち上がろうとする折原さんの服の裾を掴んで、恥ずかしいながらも素直に告げた本音に、折原さんはピシリと固まってしまった。
『あっ…すみません…！我が儘言っちゃいけないですよね…！』
また子供っぽい態度を取ってしまった自分を反省していると、頭上から大きな溜め息が聞こえた。折原さんに呆れられたのだと、私は身を竦める。ドサリと乱暴に腰を下ろした折原さんを見る勇気も無い。
「Aちゃんは…俺をどうしたいん？」
『え…？』
「そんな可愛ええ事言われたら、帰したくなくなるんやけど」
予想外の言葉に思わず顔を上げると、困ったように微笑む折原さんと目が合った。その熱を孕んだ眼差しに、私の鼓動が高まったのは言うまでもないだろう。
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妃花里(プロフ) - 夢主ちゃんと誕生日一緒！ (9月3日 23時) (
レス) @page12 id: 5ce3102dbd (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - さざんかさん» さざんかさん、コメントありがとうございます！数ある作品の中から2度も見つけ出して頂いて本当にありがとうございます。続きも現在準備しておりますので、今しばらくお待ちください。 (2023年1月24日 13時) (レス) id: a61a4998db (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - いつの日か、この作品に初めてであってとてもキュンキュンしたのを覚えてます。ふと思い出して読みたくなって、やっと見つけました。改めて全部読んでまたドキドキして、やっぱりこの作品、大好きです。良ければ続き、待ってます。 (2023年1月23日 1時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
サチ(プロフ) - ずっとずっと待ってます。 (2022年10月3日 14時) (レス) @page49 id: 3812196784 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - リナさん» リナさん、コメントありがとうございます！お返事が遅くなり申し訳ございません…！ 亀更新ではございますが、応援を励みに頑張って参ります！ これからもよろしくお願いします (2021年9月27日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2019年12月21日 3時
