鈍感 ページ19
目を白黒させながら完全に思考がフリーズしていた私は、いつの間にか千羅さんの腕の中にいた。言葉は無くても居心地の良い空気が漂っていて、私は暫くそのまま千羅さんに身を任せた。
「ただいまー」
均衡を破ったのは、ガチャガチャと鍵が開く音と姉の気の抜けた声。慌てて離れた私たちだったが、私の左手の上に千羅さんの右手が乗せられたままで、ドキドキしながら私は座り直した。
『お、お帰りなさい！』
「ただいまー」
姉はニヤニヤした表情でリビングに入ってくると、ソファの方へ寄ってくることなく、食卓の椅子に腰掛けた。姉のいる場所からは私たちの手が繋がっている事は見えない。まさか千羅さんはそこまで計算して、手を繋いだままでいるのだろうか。
「ゆっくり話は出来た？」
『うん！陸さんは大丈夫そうだった？』
「陸はいつも通り部屋に放り込んでおいたわ」
『これは明日、二日酔いだね』
「でしょうね」
明日の朝、頭を抑えながらお詫びにやって来るであろう陸さんを想像して、クスクスと笑っていると、不意に左手がぎゅっと握られた。思わず肩を揺らして、繋がった手の先の千羅さんを見上げると、綺麗な横顔が見えるだけだった。困惑する私に、理由が分かったらしい姉はカラカラと笑い出したまま何も言わない。
「折原さんは心配性なのね」
ひとしきり笑った後の姉の第一声はそれだった。千羅さんはバツが悪そうな顔をして、「敵いませんなぁ」と小さく呟いている。
『…何の話？』
自分だけ置いて行かれているような気がして、二人に問いかけるが、姉も千羅さんも微笑むだけで何も言わない。その姿が大人の余裕を見せつけられている気がして、少し不満に思えた。
『…折原さん、お話も済みましたし、帰ります？』
「あーあ、Aったら拗ねちゃって！」
『お姉ちゃんは黙ってて！』
「はいはい」
「んふふ、仲ええんやな」
『悪くはないですけど、特別仲が良いわけじゃないと思いますよ？』
「折原さん、お察しの通り妹は鈍感なんです。…そこが可愛いんだけど」
「分かります、でもそんなAちゃんの鈍い所も可愛くて好きなんですよ」
「あら、折原さんとは良い酒が飲めそうね」
「光栄ですぅ」
目の前で交わされる会話は、まるで元から知り合いだったかのように、テンポ良く進んでいく。流石同い年の成せる技なのか、二人の息が予想以上に合ったのか定かではないが、不躾な会話にAはとうとう怒った。
『もう！貶すか誉めるかどっちかにして！』
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妃花里(プロフ) - 夢主ちゃんと誕生日一緒！ (9月3日 23時) (
レス) @page12 id: 5ce3102dbd (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - さざんかさん» さざんかさん、コメントありがとうございます！数ある作品の中から2度も見つけ出して頂いて本当にありがとうございます。続きも現在準備しておりますので、今しばらくお待ちください。 (2023年1月24日 13時) (レス) id: a61a4998db (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - いつの日か、この作品に初めてであってとてもキュンキュンしたのを覚えてます。ふと思い出して読みたくなって、やっと見つけました。改めて全部読んでまたドキドキして、やっぱりこの作品、大好きです。良ければ続き、待ってます。 (2023年1月23日 1時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
サチ(プロフ) - ずっとずっと待ってます。 (2022年10月3日 14時) (レス) @page49 id: 3812196784 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - リナさん» リナさん、コメントありがとうございます！お返事が遅くなり申し訳ございません…！ 亀更新ではございますが、応援を励みに頑張って参ります！ これからもよろしくお願いします (2021年9月27日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2019年12月21日 3時
