誕生日 ページ12
折原さんと散々悩み合った結果、私たちは小洒落たイタリア料理店に来ていた。周囲はかなり身なりが良い人ばかりで、自分の格好が浮いている事が分かり、少しそわそわしてしまう。
「Aちゃんは何飲む？」
『えっと…』
私にメニューを差し出してくれる折原さんはレストランの中に馴染んでいて、私はひっそりと孤独感を感じていた。
「ノンアルコールシャンパンとかあるみたいなんやけど、どう？」
『…シャンパンって美味しいんですか？』
「うーん…ものによるけど、これは美味しいやないかなぁ。甘口らしいし」
『…じゃあ、それで』
上の空のまま折原さんに流されて、思わず頷いてしまう。しかし、注文してもらってから気が付く。値段がかなり高いやつだったのでは、という事に。いつも奢ってもらってばかりで申し訳ないのに、更に高そうなこの店で高そうな飲み物を頼んでしまうなんて、大失態だ。
「Aちゃん？」
『は、はい！？』
「ぼーっとしてどうしたん？」
『あ…すみません…』
自分の胸の内を話すわけにもいかず、私は折原さんに謝るだけに留める。折原さんはあまり納得がいってなさそうだったが、追及してくる事はなかった。
「そや、Aちゃんって誕生日はいつなん？」
『誕生日…ですか？』
「おん、Aちゃん、今度二十歳になるんやろ？折角だから、お誕生日過ぎた辺りで一緒にご飯と…お酒飲みたいなーって」
思わず喉元まで出かかった「子供ですみません」という言葉は、折原さんの照れた表情を見た後では口に出せなかった。こんなにも嬉しそうに私とお酒が飲みたいと言ってくれる人が、私を責めたいと考えているとは思えなかった。
『誕生日は…7月3日で…』
「えっ！来月やん！良かったぁ…早めに聞いといて」
『あの！折原さんの…』
「センラ」
ひたり、と言い切られた言葉に一瞬思考が停止する。続いて、名前を呼んでほしいという意味だと理解した。
『せ、千羅さんは…』
「おん」
『お誕生日はいつなんでしょうか…？』
私が名前を呼べば、折原さんは嬉しそうに相槌を打ってくれた。こちらも嬉しくなると同時に、まだ慣れなくて頬が赤くなるのを感じる。
「俺は10月3日。Aちゃんとちょうど3ヶ月違いやね」
蕩けるような笑顔を向けて「これも運命かなぁ」などと言う折原さんが甘すぎて、私は食事の前にすでに満たされた気持ちになってしまうのだった。
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妃花里(プロフ) - 夢主ちゃんと誕生日一緒！ (9月3日 23時) (
レス) @page12 id: 5ce3102dbd (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - さざんかさん» さざんかさん、コメントありがとうございます！数ある作品の中から2度も見つけ出して頂いて本当にありがとうございます。続きも現在準備しておりますので、今しばらくお待ちください。 (2023年1月24日 13時) (レス) id: a61a4998db (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - いつの日か、この作品に初めてであってとてもキュンキュンしたのを覚えてます。ふと思い出して読みたくなって、やっと見つけました。改めて全部読んでまたドキドキして、やっぱりこの作品、大好きです。良ければ続き、待ってます。 (2023年1月23日 1時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
サチ(プロフ) - ずっとずっと待ってます。 (2022年10月3日 14時) (レス) @page49 id: 3812196784 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - リナさん» リナさん、コメントありがとうございます！お返事が遅くなり申し訳ございません…！ 亀更新ではございますが、応援を励みに頑張って参ります！ これからもよろしくお願いします (2021年9月27日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2019年12月21日 3時
