幸せ ページ48
「これ以上、俺を惚れさせてどないしたいん？」
『え、えっと………』
私が言い淀んでいると、折原さんの端正な顔が少しずつ近付いてくる。その事に焦って、更に言葉に詰まる。
「…ぷっ、Aちゃん慌てすぎやろ」
『だ、だって…！』
「だって？」
『折原さんが格好良すぎて、それだけで頭いっぱいになっちゃうんですもん…』
回らない頭と口から発した言葉は、自分でも何を言ったのか分からない程に私は焦っていた。
ただ、折原さんがピシリと硬直してしまったから、気分を害してしまったのかと怖くなったのだが。
「あー…もう…アカン………」
『お、折原さん？！』
人目も憚らず抱き締められて恥ずかしさがこみ上げるも、折原さんの力が予想以上に強くて逃げられない。
「Aちゃんに完敗ですわ…」
『え？え？』
折原さんの言葉の意味が理解できずに首を傾げるも、折原さんは黙って暫く抱き締め続けた。
最初は周囲の視線が痛かったけれど、途中から折原さんの思ったより厚い胸板や洋服から僅かに香るいつもとは違う香りに気が付いてしまい、そちらに気を取られた結果、最終的には周りの目など意識の彼方に飛ばされていった。
「よし！ほな、行こか」
『は、はい…？』
パッと身体を離されたと思ったら、手を引かれ、二人で歩き出す。折原さんの表情はまるで今まで抱きしめていた事が嘘みたいに平然としていた。
「チケットありがとうね。ちゃんと買えた？」
『は、はい！あ、これお釣りです！』
「ふふ、偉いなぁ。ありがとう」
優しく微笑まれて、胸がギュッと苦しくなる。でもこの胸の痛みは、折原さんが好き過ぎて苦しい幸せな痛みであって、以前のような息苦しさはもう感じなかった。
「最初、どこ行く？」
『あっ、地図…』
「持ってきてるで」
『ありがとうございます！』
折原さんから差し出された地図を見て、二人で順路を決める。最初にペンギンコーナーに行き、その後は順路に従って歩き回り、途中でアシカのショーや飼育員さんによる餌やりを見る事を決めた。
『あっ、もう人だかりができてます…！行きましょう、折原さん！』
「ふふ、せやな。急ごうか」
ペンギンの餌やりのイベントはかなり人気のようで、15分前にも関わらず水槽の前は混み合っていた。思わず早足になると、折原さんも合わせて早足になってくれて、繋いだ手も強く握られた。
(幸せ、だなぁ…)
好きな人の隣を歩ける幸せを噛み締めながら、私はこの景色を一生覚えておこうと誓ったのだった。
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紫苑(プロフ) - リリトさん» リリトさん、コメントありがとうございます！ そんな偶然があるんですね？！自分で名前を設定しておきながら驚きました笑 (2020年11月9日 19時) (
レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリト - 漢字は違うけど、本名同じ人おったｗｗ (2020年10月22日 17時) (レス) id: 5c9bfe90e0 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - ひよりんさん» こんばんは。メッセージを返信させて頂きましたので、ご確認頂ければ幸いです。 (2020年8月22日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
ひよりん(プロフ) - こんにちは。メッセージ送らせていただいたので、見ていただければ幸いです。 (2020年8月21日 21時) (レス) id: 222226e292 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - センラさん推しさん» センラさん推しさん、コメントありがとうございます！ 神様だなんて畏れ多いです…！ですがありがとうございます、嬉しいです。 これからも頑張りますね！ (2020年3月18日 22時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2019年11月1日 18時
