今度 ページ12
(どうしよう、泣けてきた…)
最後に私が恋をしたのは中学3年生の時で、それ以来まともに家族以外の異性と話す事すらしてこなかった私は、この恋心の扱い方に慣れていなかった。
じわりと滲みそうになる涙を隠すため、ゆっくり瞬きをしていると、急に折原さんが口を開いた。
「Aちゃん、ちゃんとお腹いっぱいになった？」
『はい…どれも美味しかったです』
これは本当に思った事だ。普段、学生だけで行くような居酒屋よりも数段美味しくて、折原さんが誰かと話している間の暇な時間はずっと何かを食べていたように思える。
「Aちゃんは好きな食べ物とかある？」
『えっと…焼肉とふわとろオムライスです』
我が家では何かの記念日には、外で焼肉か、家でふわとろオムライスを食べる事が多い。そういう特別な思い出があるから好きと伝えると、折原さんは小さく「ええなぁ」と呟いていた。
「ほな、今度一緒に焼肉行きましょか」
『…今度？』
「おん。友達とよく焼肉食べるから、結構東京の焼肉屋さんには詳しいで？」
例え社交辞令だったとしても「次」の話をしてくれるのは嬉しくて、私は素直に「是非行きたいです」と返した。ちょうどその時、タイミンブ良く赤信号で車が止まったので、折原さんは胸ポケットからスマホを出して、スケジュールを確認してくれる。
「んー、暫くこっちに来られへんからなぁ…Aちゃんはいつ空いとる？」
『そんな！お忙しい折原さんに私が合わせますよ…！』
私がそう言うと、折原さんはスマホから顔を上げ、私の顔をじっと見つめてきた。思わず見つめ返すと、ふにゃりと眉を下げてセンラさんは笑う。その笑顔に、また私の胸はキュッと締め付けられる。
「ほんま、ええ子やな…」
蕩けてしまいそうな程甘い声で、そう優しく言われてしまえば、もう私は恥ずかしがる事しかできない。真っ赤になっているだろう顔を見られたくなくて、折原さんから慌てて顔を背けると、視界に入った青の信号。
『お、折原さん…！信号、青です…！』
「…おん」
今までで一番素っ気ない返事に、とうとう嫌われてしまったのかと思わず折原さんの方を窺うと、何故か折原さんの耳がほんのり紅くなっていた。
(車内が暑い、とか…？)
折原さんの耳が紅い理由は分からないけれど、指摘するなんてとても出来ず、暫く車内には気まずい空気が漂い続けるのだった。
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紫苑(プロフ) - リリトさん» リリトさん、コメントありがとうございます！ そんな偶然があるんですね？！自分で名前を設定しておきながら驚きました笑 (2020年11月9日 19時) (
レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
リリト - 漢字は違うけど、本名同じ人おったｗｗ (2020年10月22日 17時) (レス) id: 5c9bfe90e0 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - ひよりんさん» こんばんは。メッセージを返信させて頂きましたので、ご確認頂ければ幸いです。 (2020年8月22日 0時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
ひよりん(プロフ) - こんにちは。メッセージ送らせていただいたので、見ていただければ幸いです。 (2020年8月21日 21時) (レス) id: 222226e292 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - センラさん推しさん» センラさん推しさん、コメントありがとうございます！ 神様だなんて畏れ多いです…！ですがありがとうございます、嬉しいです。 これからも頑張りますね！ (2020年3月18日 22時) (レス) id: 25868fbf10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2019年11月1日 18時
