狼が2匹 ページ3
「あ!柊さんいた!」
廊下を歩いていると、ふと私の名を呼ぶ声がして、遠くから同じクラスの女の子たちが走ってきた。
「ええと…どうかしたの?」
なるべく大人しめな感じの笑顔を浮かべる。
「これ、数学の先生に頼まれてた資料なんだけど私たちちょっと忙しくて…代わりに持って行ってくれない⁈」
お願いっと頭を下げられる。
「あ、うんもちろん!」
私は慌てて頷く。
見ると、私に仕事を頼んだ子たちは学年でも有名な王子好きだった。
(王子を付け回すから忙しい、の間違いでしょ)
私は心の中で呟くと、嫌な顔1つ見せず笑う。
「じゃあ!よろしく!」
ドスン
…大切なことを1つ忘れてた。
あの子達が3人がかりで持ってきたものを、学年でもトップクラスのチビが運ぶのだ。
しかも、ここは二階だが、職員室は4階にある。
_詰んだな。
と思うもあとの祭り。女の子たちはすでに立ち去っていた。
「A⁈大丈夫⁈私も持つよ?」
重すぎて転びそうな私を見て、由姫が慌てて手を伸ばす。
「あ、ありがと…」
「あ!俺、部活の集まりあるんだった!」
わざとらしく声をあげ、翔太は踵を返す。
…あいつ逃げやがった。
「と、とりあえず行こうか。」
私たちは死にかけながら階段へ向かった。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
どれくらい上ったか。私の意識はもう飛びそうだ。
てか、急がないと授業始まる…
「って?由姫?どこ?」
並んで階段を上っていたはずの由姫が突如私の隣から消えた。
…下を覗くと。
手すりにもたれかかっている由姫がいた。
「もー。大丈夫?由姫ほんと体力ないんだから…」
私は由姫の分の資料も持つと、由姫の手を引いて、逆向きに下っていく。
本当なら休ませといてあげたいけど、あの様子だときっと階段を降りるに降りれないはずだ。
なので先に由姫を保健室に送り、資料は後で届けに行こう。
と、私は階段で滑りかける。
「っぶね!」
思わず声が出る。
下りになったとはいえ、抱えている資料は2倍、おまけに由姫も連れているのだからか負担は3倍以上。
そして下りだから、下手したらすってんころりんなんてことも考えられる。
じぇーけーになってまでそんなことしたらはしたない。まさかねぇ…
さ、あと少しで一階。
2階と1階の間の踊り場に出た。
_その刹那。
私がしっかりと踏みしめていたはずの床が、消えた。
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作者名:兎月 | 作成日時:2019年5月6日 20時