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やめたら、その7 ページ12

Aが目覚めると、そこは座敷牢のような場所だった。
座敷牢、というには近未来的で、広く過ごしやすそうな造りをされているのだけれど。

起き上がり、なにやら金属で出来た格子に触れる。
本来なら隙間が出来ている筈の区切りの間に硝子のような、そうでないような透明な板が張り巡らさていた。
どうやらこの座敷牢にある格子の隙間には全てこの板があるようで、実質この格子は、壁であるようだ。

大きな声をだして、助けを求めるか、それともこの部屋をもう少し調べて脱出口を探すか。
ここが恐らく敵の根城である以上は、助けを求めるのは得策でないように思う。
しかしこの座敷牢には格子以外に外の様子が伺える窓のようなものはない。



突然機械的な音がして、格子の一部が床に沈む。
格子の向こうから、討兎が座敷牢の中へ入ってくる。

「声を、出しても無駄だ。この部屋は防音だからな」

「兄や万事屋さん達に何かしていないでしょうね」

Aは強がり強い語気で討兎に言葉を投げた。

「安心しろ何もしていないさ、私達には武力が無いのだから。
この星の武力の源になるのはお前なのだ」

討兎はツカツカとAが寝ている寝台に近寄る。
Aは学問に明るくないが孕子がどのようにして出来るかは知っていた。

「なにを、する気なの」

先程よりも強く言葉を放ったつもりが、自分で聞いていて嫌になるくらい弱々しい女の言葉が静かな部屋にこだました。

「お前は川で私に拾われてから一週間寝ていたのだ、まだ体が本調子ではないだろう。三日後だ。三日後に精密検査をし、万全な状態でお前に子を孕んでもらう」

それだけ言った討兎は寝台の横に据えられた机に何やら液体の入った硝子の水差しと同じく硝子のコップを置くと身を翻し部屋から出ていった。
一部が沈んでいた格子は元に戻り、また部屋は無音に包まれたのだが、無慈悲な討兎の言葉はAのなかで幾重にも反響し、重たい鉛のように腹に沈むとじわじわと溶けだし焦りを産んだ。

_三日以内にここを抜け出さなければならない

起き抜けで唯さえ重いのに加え先程の言葉で棒のように動かない身体をなんとか起こし、Aは部屋を漁って回った。

しかし、物の少ないこの部屋に脱出口などは見つからなかった。
フラフラと寝台に戻り、横の机に置かれた水差しを見る。
中身は暖かい緑茶のようで、不振な点がないことを確認した後に横のコップに移し口に含んだところでAの意識はまた暗転した。

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さくらんぼ☆*.゚︎ - 初コメ失礼します!このお話 最高です!続き気になります!更新頑張ってくださいね!!応援してます! (2022年12月12日 0時) (レス) id: def3760315 (このIDを非表示/違反報告)
薄良(プロフ) - お餅さん» うわあああ申し訳ねぇ.......細かい設定を忘れ去っていました。普通に主人公の年齢と合いませんね.......細かい年齢表記削除しておきますありがとうございます (2020年2月20日 0時) (レス) id: 38546ea573 (このIDを非表示/違反報告)
お餅 - あの…総悟が5歳のときって土方さんいましたっけ?土方さんが来たのって総悟が13くらいのときじゃありませんでした?違ったらすみません (2020年2月19日 18時) (レス) id: 436e739fd5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:薄良 | 作成日時:2019年5月6日 0時

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