志麻ワン外れた子おいで。【歌い手】【短編集】

◯ ページ16

side志麻

「おつかれーぃ！！！！！」

ライブが終わった直後、リーダーがそう声を上げる。

その後、俺らやバンドメンバー、ダンサーがお疲れー！！！！！と続ける。

「くぅ、ほんま楽しかったなぁ！！」

坂田が余韻に浸りながら興奮気味に話す。

俺らの春が終わった。

少し、物寂しい気持ちもあるが、次がある。

俺らの夏が、始まる。

今頃速報が流れ、画面の向こうでcrewは大発狂しているだろう。

喜ぶ志麻リスを思い浮かべると、自然と頬が緩む。

…Aも喜んどるかな？

Aが混乱しながら喜んでいる様子を想像すると、クスッと笑みが溢れた。

「本当は余韻に浸りながら打ち上げやりたいんやけどなぁ」

センラが目を伏せる。

流石にこのご時世、打ち上げはダメやんなぁ。

「俺も本当は反省会とか色々してぇけど、それはまた今度な」

「…はーい」

『…んじゃ、俺は帰るわ』

そう言って帰り支度をする。

「えー？まーしーなんか冷たくなーい？」

「おいおい坂田放っておいてやれよ。どうせ彼女だ」

「そうやそうや。彼女なんておらん俺ら3人は悲しくまーしー仲間はずれ配信やろうや」

『うるっさいなぁ…！ええやろ別にぃ！』

こいつらは時々Aのことをこうやっていじってくる。

どうせお前らやって明かしてないだけで彼女おるんやろ！？

「それじゃあまーしーまたな」

うらさんがヒラヒラと手を振る。

「ワンマンも頑張れー！」

坂田がぐっと親指を立てて俺に向けてくる。

「今夜はお楽しみやな」

センラが厭らしく笑う。

…センラ、ぶっ飛ばすで？？？？？？？？？？

◯

◯

◯

帰宅すると、Aがライブのアーカイブを見ていた。

ちょうど俺のソロだったらしく、テレビの大画面から「オトナにしてやるよ」と自分の声が聞こえてくる。

はっずー！！！！！

「あ、志麻、おかえり！！！！！ライブすごい最高だった！！！！！」

Aは興奮が冷めやまないようすで俺に駆け寄ってくる。

右手にはペンライト。

もちろん色は紫だ。

っあー、たまんねぇ。

「志麻めっちゃくちゃカッコよかった！！！！！」

Aに素直に褒められると、なんだか照れる。

『ありがと』

その後、Aが思い出したように言う。

「そういえば私、今日オールするから！アーカイブずっと見てる！」

…え、マジ？

Aが紫のペンラを持っていることに興奮して、変なスイッチが入っていたのかもしれない。

『えぇ？疲れた彼氏にご奉仕してくれんの？』

◯→←＊【sm】ダスティピンク

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す