嘘つきな君へ (ページ7)

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７（Fside）ページ7

「そんな緊張しないでよ。俺の事はミツって呼んで。」

宏光が笑いながら言う

「ミツ…」

「うん。皆そう呼ぶんだ。」

そう言われた時、なぜだか気分が沈んだ

皆と一緒は嫌だったんだ

「宏光くん。」

「え？」「は？」

「俺、宏光くんって呼ぶ。……ダメ？…ですか…？」

「え？…あ、いや…全然いいよ。」

「よっしゃっ」

驚く渉と宏光を尻目にガッツポーズした俺

『あの時、太輔ってめちゃくちゃ天然なんだって悟った(笑)』って、その後も宏光は何度も思い出しては笑ってた

2歳上とは思えない人懐っこい笑顔を振りまく宏光に、俺のテンションは上がりっぱなしで

毎日が楽しくて仕方なかった

宏光が呼ぶ俺の名前も『藤ヶ谷くん』からいつしか『藤ヶ谷』になり、そして『太輔』へと変わった

根っからの人見知り気質の俺も、宏光の醸し出す柔らかい雰囲気に『宏光』と呼ぶくらい親しくなるのは時間の問題だった

渉と3人で出掛けていたショッピングも、宏光と2人で出掛ける事が多くなり

互いのアパートに入り浸る事も、もはや珍しい事ではなくなった頃…

宏光は突然、俺達の前から姿を消した

それは大学が夏休みに入ってすぐの事で…

渉とバイトに明け暮れていた時、宏光から1通のメールが届いた

≪ちょっと風邪引いて…母さんが帰って来いって言うから、しばらく実家に帰るよ。≫

俺はちょうど休憩中だったから

〈大丈夫？実家で美味しいもの食べて、ゆっくり治しておいでよ。〉

すぐに返事を送った

≪大したことないから大丈夫だよ。しばらく会えないけど…泣くなよ(笑)≫

数分後、いつもの宏光の明るいメール

〈泣かねぇよ！けど、寂しいから早く元気になって帰って来てよ。〉

俺の返信メールにまたすぐおちゃらけたメールが返って来ると思ってた

けれど…

しばらく待ってみても、返事は来なかった

風邪だって言ってるし、寝ちゃったかなって…

その時はたいして気にもしなかった

バイトが終わって、チェックするメール

宏光からのメールはなくて…

次の日の早朝…

「ありがとな、太輔」

そう一言吹き込まれた留守番電話

その電話を最後に、宏光からの連絡は途絶えた

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