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『じゃあ、私も恵と一緒にいたらもっと強くなれるかなあ』
「…」
この時、「オマエならなれる」と言ってやればよかったのだろうか。
ならなくてもいいと、そう思ってしまった。
『また津美紀ちゃんと3人で帰れたらいいのにね』
「…」
その時Aの言葉を素直に受け止めて、津美紀の気持ちを理解しようとすればよかったのだろうか。
過ぎたことを思い返して後悔したところで、もう何も戻ってはこないことは嫌と言うほど分かっているのに。
それから俺が中3に上がって間も無く──津美紀が呪われた。
正体不明、出自不明、全国に同じような被呪者がいるらしい。
何も分からないということだけが分かって、津美紀は寝たきりになった。
本当に突然だったその出来事についていけなかったのは俺だけじゃない。
Aは、その日から時が止まってしまったかのようだった。
まだ死んだことがないからその苦しみは分からないが、
日に日に弱っていくAを見ているのは、多分死ぬよりも苦しかった。
その後少しでも彼女を呪いから遠ざけようと距離を取ったり名前を呼ばなくなったり──、毎日Aが校門で待ってるのは変わりなかったが、その伏黒の行動は確実に、Aとの間に亀裂を入れた。
でもそれでいいと思っていた。
Aが呪術師を続ける理由は家柄や立場もあるが、何より俺が呪術師になることを担保に生活していて、呪術師しか道がないからということが大きい。
元々呪術師向きの人間じゃなかったAが津美紀のことで更にメンタルが擦り減っていくのを見たくなかった。
「(呪術師とはもう関わらずに、普通の職について欲しかった)」
その思いがより一層強くなった時、気づいたのだ。
「(…綺麗事だ)」
本気で呪われないで欲しいと思っていた。その為なら何でもしてやると思っていた──だけどよく考えれば、そんなのは綺麗事だ。
いつも笑って綺麗事を吐いて、俺の性根すら肯定する──、
俺自身がたった一人の人を綺麗事を吐いてでも守りたいと思った時に、やっと分かった。
「(俺が助ける人間を選ぶように…俺を選んで心配してくれてたんだろ──悪かったよ、ガキだったんだ)」
「(謝るからさ、…さっさと起きろよ、バカ姉貴)」
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Uo(プロフ) - 無さん» コメントありがとうございます❕イラストを載せるのは緊張するので、そう言っていただけると嬉しいです😖 (6月5日 1時) (レス) id: d9295642a6 (このIDを非表示/違反報告)
無 - 絵うっっま!!!お話の方もサクサク行かせてもらってます! (2022年12月27日 15時) (レス) @page36 id: 97d79e1a3f (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - 鈴さん» こちらのミスです、すみません😖修正したので、見られるようになったと思います…! (2022年12月20日 15時) (レス) id: 37eb27a647 (このIDを非表示/違反報告)
鈴 - すみません、夢主ちゃんの画像が見れないのですが…… (2022年12月5日 18時) (レス) @page9 id: e67e995d1b (このIDを非表示/違反報告)
Uo(プロフ) - アオちゃんさん» コメントありがとうございます❕そんなにお褒めの言葉を頂けるなんて、感激です…!!😖ご期待に応えられるよう頑張ります! (2022年10月3日 23時) (レス) id: 6bc61cb134 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま | 作成日時:2022年9月13日 1時