58話 ページ8
今年が最後のチャンスだと、あんなに意気込んでいたのに……。
「……ウッドはどこ?」
「まだシャワー室の中さ」
「きっと溺死するつもりだぜ」
その冗談が冗談に聞こえなくて、ハリーは顔を膝に埋め、髪をギュッと握った。そのひどい落ち込みようを見かねたフレッドが、ハリーの肩を掴んで乱暴に揺すった。
「落ち込むなよ、ハリー。君はこれまで一度だってスニッチを逃したことは無いんだ」
「一度くらい取らないことがあって当然さ」
『それに、まだおしまいじゃないよ!』
フレッドに、ジョージとAが続いた。
「僕たちは100点差で負けた。いいか?だから、ハッフルパフがレイブンクローに負けて、僕たちがレイブンクローとスリザリンを破れば──」
『ハッフルパフは少なくとも、レイブンクローに200点差で負けなくちゃいけない』
「もしハッフルパフがレイブンクローを破ったら……」
「ありえない。レイブンクローが強すぎる。でもスリザリンがハッフルパフに負けたら…」
「どっちにしても点差の問題だな。100点差が決め手になる」
フレッドとジョージが話す横で、ハリーは黙りこくっていた。
負けた……初めて負けた。初めて、クィディッチの試合で破れたんだ。
その少しあと、マダム・ポンフリーがやってきてハリーの安静のためチーム全員に出て行けと命じた。
「また見舞いに来るからな」
「ハリー、自分を責めるなよ。君は今でもチーム始まって以来の最高のシーカーさ」
『いつでも呼んでね!ユニフォームを着替えたら、また来る』
選手達は泥だらけのユニフォームを引きずってぞろぞろと部屋を出ていった。
ロンとハーマイオニーがベッドに近づく。
「ねぇ、Aも落ちたのに、安静にしてなくて大丈夫なの?箒から振り落とされた拍子にどこか怪我したかもしれない……」
「心配いらないよ。Aは君よりずっと早く目覚めたんだ。最初すごくショックを受けていたけど、どこにも怪我は無かった」
「ダンブルドアは本気で怒っていたわ、ディメンターが競技場に入ってくるなんて……」
ハーマイオニーが震え声で言った。
「……だれか、僕のニンバス捕まえてくれた?」
ロンとハーマイオニーが気まずそうにチラッと顔を合わせた。
「どうしたの?」
「あの、あの後ニンバスは吹き飛んで暴れ柳にぶつかって………」
「ほら、あの木って...ぶつかられるのが嫌いでしょ?」
ロンがゆっくりと布の包みを取ると、粉々になった木の切れ端が散らばり出た。
ハリーのあの忠実な、そしてついに敗北して散ったニンバスの亡骸だった。
*
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とま(プロフ) - ばるるさん» ばるるさん!コメントありがとうございます!!長くなりそうですが、地道に読んでくださると嬉しいです❕更新頑張ります❕😖 (2022年4月18日 23時) (レス) id: 9bd2711725 (このIDを非表示/違反報告)
ばるる(プロフ) - この作品の1からここまで一気に読み進めてきました!とても読みやすくて面白いです(*^^*)体調にお気をつけてこれからも頑張ってください!o(^-^)o続き楽しみにしてます♡ (2022年4月18日 23時) (レス) @page31 id: f29cd1f82d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とま x他1人 | 作成日時:2022年3月29日 23時