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80話 ページ30

「呪文が上手く効けば、守護霊(パトローナス)が出てくる。言わば、ディメンターを祓うもの──保護者だ。これが君とディメンターとの間で盾になってくれる」





ハリーの頭の中で棍棒を持ったハグリッドのような大きな姿の影に蹲る自分の姿が浮かんだ。



……なんだろう、すごく情けない。






「守護霊ってどんな姿をしているのですか?」


「造り出す魔法使いによって、ひとつひとつ違うものになる」


「どうやって造り出すのですか?」


「呪文を唱えるんだ。何か一つ、一番幸せたった想い出を渾身の力で思い詰めた時に初めて呪文が効く」






ハリーは頭の中で幸せな思い出を辿った。



ダーズリー家でハリーの身に起こったことが何一つそれに当てはまらないことだけは確かだ。



一番幸せだった思い出──そう思って一番に思いついたのは、あの公園のブランコ。生まれて初めて天使のような彼女に出会った、あの日だ。



間違いなくあの日は、ハリーにとって全てが始まった最高に幸せな日だった。





渾身の力でその日のことを思い出す。あの日のAの表情、言葉。どんな服を着ていたか──。




──それにしても、初めてあった日の僕はなんて情けなかったんだろう……。



三年前のことを思い出せば思い出すほどだんだん恥ずかしくなってきて、とても呪文に集中できない。結局、ハリーは思い出を最初に箒に乗った日に変えた。





「分かりました」





何か一つ、幸せな思い出を思えばいいんだ。


初めて箒に乗った日。体を突き抜けるようなあの素晴らしい飛翔感。間違いなくこれだって幸せな思い出だ。






「呪文はこうだ───エクスペクト・パトローナム(守護霊よ、来たれ)


「……エクスペクト・パトローナム」


「幸せな思い出に神経を集中してるかい?」


「えぇ、──はい」






大丈夫、できる。エクスペクト・パトローナム……そう唱える。そして幸せな思い出を最大限に思い出せばいい。


ハリーは箒で空を飛ぶことに集中しようとした。



しかし、すぐに別のものが入り込んでくる。ディメンターを見たらまた母さんの声が聞こえてしまうかもしれない。





「(………それとも、聞きたいのか)」






ルーピン先生が箱の蓋に手をかけ、引っ張った。



ゆらりとディメンターが箱の中から出てきて、フードに覆われた顔がハリーを見た。


途端に、身を刺すような寒気に襲われる。







「エクスペクト・パトローナム!」







ハリーは杖を向けて叫んだ。

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設定タグ:ハリーポッター , 原作沿い , ハリポタ   
作品ジャンル:恋愛
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とま(プロフ) - ばるるさん» ばるるさん!コメントありがとうございます!!長くなりそうですが、地道に読んでくださると嬉しいです❕更新頑張ります❕😖 (2022年4月18日 23時) (レス) id: 9bd2711725 (このIDを非表示/違反報告)
ばるる(プロフ) - この作品の1からここまで一気に読み進めてきました!とても読みやすくて面白いです(*^^*)体調にお気をつけてこれからも頑張ってください!o(^-^)o続き楽しみにしてます♡ (2022年4月18日 23時) (レス) @page31 id: f29cd1f82d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とま x他1人 | 作成日時:2022年3月29日 23時

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