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(コナン視点)
「メルローの候補は、四人だよ。」
頬に冷や汗が伝うのを感じながら、俺は努めて冷静に告げる。
「バーボンに現状の情報は下りて来ない。それでもメルローの捜索を行うなら、一番手っ取り早いのはやっぱり、彼女の位置情報を把握してる『父親』に協力を仰ぐこと…」
自分自身も頭の中を整理するため、確認するようにそう言葉にすると、安室さんは静かに頷いた。
その表情には先ほどまで欠いていた冷静さが戻って来ている。
「君の言う『四人』の中の誰がメルローなのかを割り出せれば、父親にもたどり着けるということか。」
「うん！」
「それで、その四人とは？」
俺はひとつ頷いて、候補を挙げる。
一人目、上野左保。
二人目、下沢右美。
三人目、西村南。
四人目、篠崎A。
この四人は事件が起こる直前のバーで、ベルモットが一瞬だけ表情を動かしたとき、彼女の視線の先にいた人々だ。
的を絞って考えるならこの四人以外に候補はない。
「確認だけど…メルローの母親はエミリア・Z・ナッシュ。父親は沖井の姓を持ち、メルロー自身の名はフェリス・ナッシュ。間違いない？」
「ああ。イギリス人の母親は既に亡くなっていて、今日まで父親の協力のもと逃亡を続けていた…」
さらに両親は事実婚で、父親とメルローの間には戸籍上の繋がりはなかったため、メルローは母親の姓を名乗りそのままMI6に入ったと思われる。
そのせいで父親の特定が容易に進まないのだが…
「そのうえ戸籍まで偽造されてるとなると…」
「調べきるには時間が足りない、……もう五十分になるぞ…！」
こうしている間にもメルローは命の危険に晒されているかもしれない。
そんな考えがしきりに頭に入り込んで思考の邪魔をする。
…今考えるべきはメルローの抱える真実だ！
ネガティブな思考をしている場合じゃない！
母親のエミリア・Z・ナッシュ。
沖井姓を持つ父親。
事実婚。
MI6のフェリス・ナッシュ。
…何か、何か取っ掛かりは。
時間がない、このままじゃメルローが、
ッダメだ考えるな、そんな暇があったら頭を回せ！
混乱する俺の視界の端で、安室さんが焦燥のままに拳を窓に叩きつけ、苛立ちを抑えるように目を強く瞑るのが見えた。
そのままうわ言のように呟く。
「上野、西村…下沢…篠崎、…沖井、ナッシュ……」
名字の羅列……、あれ？
……今、何か。
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作者名：しま | 作成日時：2018年5月8日 23時
