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どこかの路地裏に逆戻りさせられた私は、もはや万事休すと言って良い状態だった。
目の前には四人もの幹部の姿。
ジン、ウォッカ、ベルモット、さらにキャンティ。
狙ったようにコルンが居ないのは何故…？
神様はどうあっても私に安らぎを与えるつもりはないらしい。
もはや諦めムードの私は特に取り乱すこともなく、静かに彼らと対峙していた。
その様子を観察していたジンが、口を三日月型に歪めて言う。
「狼に追われる羊のごとく逃げ出したにしては、随分往生際が良いじゃねえか。」
こちらに向けられるグロックの銃口。
銃身を傾け、恐怖心を煽るかのようにカチャリと音を鳴らしながら、ジンは獰猛な笑顔を浮かべている。
イケメンの壮絶な笑みって鳥肌立つよね…
「フン！バカだねジン、この女が無策で逃げ出す訳ないじゃないか。どーせあの癪に触る仮面の下でロクでもないこと考えてるのさ。」
「だ、そうだが？この場を切り抜ける奇策はあるのか、メルロー？」
キャンティ、言いたい放題である。
ロクでもないことを考えているというのは合っているけど。
残念ながらこの場を凌ぎきる妙案なんぞは全く浮かんでいない。
「それは外れだね。私が逃げたのは、ただジンに会いたくなかったからだし。」
「ほお……寂しいこと言うじゃねえか。」
ジンはそう言うと前触れもなく発砲した。
銃弾が太ももを掠め、私は思わず目を見開く。
ぬるりと血が伝う感触が気持ち悪い。
眉をひそめる私を見て、キャンティがヒュウっと口笛を吹く。
「メルローの無表情が崩れるなんてレアだよレア！コイツマジで焦ってんだ、超テンション上がる！」
「ってことは本当に為す術ナシってことですかねえ、兄貴。」
「どうだかな…」
ジンが悪どい笑みを湛え、愉悦に塗れた目を細める。
うわあ、悪人顔がよく似合う。
キャンティは私の苦しむ様子を見てテンション爆上がりだし、ウォッカはケタケタ笑っているし、ベルモットは我関せずって感じで煙草の煙をくゆらせている。
隙がありそうで、全くない。
あー、本当にここまでか。
ジンがすっと腕を上げ、私の頭に照準を合わせる。
キャンティがもっと遊びたい、みたいなことを騒いでいるが、ジンはそれを無視して嗤う。
「あばよ、メルロー。」
「あの世でバーボンを待つんだな。」
バー、ボン？
瞬間、私の脳裏にいつかの風景が蘇った。
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作者名：しま | 作成日時：2018年5月8日 23時
