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「じゃあ影山は神風運搬係、日向は荷物持ってやれ」
「はい!」
元気よく日向くんが返事をして自転車に乗り込んだ。私の荷物がさらりと取られて行って、止める暇も無かった。
影山くんはそのまましゃがんで私に背を向ける。
「早く乗れ」
その申し出に、私はひたすらに首を横に振った。
「いい、歩くよ……移ったら、嫌」
「馬鹿は風邪引かないデショ」
「あぁ!?」
こういう時でも月島くんは通常通りで、逆に安心する。彼まで私のことを心配し始めたら、流石に私も自分自身を叱らなければいけなくなる。周りの皆さんに迷惑をかけすぎだ。
とにかく嫌だと動かない私に痺れを切らしたのか、澤村先輩の命令で東峰先輩が申し訳なさそうにしながら私を軽々と持ち上げ、影山くんの背に乗せた。猫みたいな扱い方だったが、抵抗出来ないまま乗せられてしまったらもう私にはどうしようも出来ない。
足が影山くんの腕で固定される。影山くんが立ち上がると視点がぐわんと揺れて、いつも見ている景色が別物に見えた。それにはしゃぐような元気はないので、ぐったりと熱い身体を彼に預けた。
「……影山くん、あつい」
「お前が熱いからだろ」
「あつい……おろして」
「下ろさねえ」
「やだ……今すぐ……」
「我儘ちゃんがいるなあ」
くすくすと笑い声が聞こえるが、それもあまり気にならないくらい、とにかく彼に迷惑をかけるのが嫌だった。いつも迷惑をかけているのに、これで風邪が移ってしまったらどうしよう。しかも多分、季節外れのインフルエンザなのに。
下ろさないと言わんばかりにもう一度背負い直され足が固定されるので、せめて風邪を移さないように黙っておこうとその肩に頭を置いた。いつもの視点では見えない月島くんの肩が目の前にあって、少し不思議だった。
「……寝たか?」
「おきて、ます」
「おわっ、起きてた」
「寝てもいいぞ?」
「や、です……」
確かに寝てしまいそうではあるけれど、それにしては熱すぎるし場所が影山くんの背中だ。まさか寝られるわけが無い。それこそ迷惑すぎる。
「影山くん、今からでもおそくないよ。おろして」
「いつまで言ってるんだ……」
「結構頑固だよなあ……」
私の呼び掛けに先輩方は苦笑し、影山くんは「うるせえ」とだけ返して歩く。私が全身の力を抜いてだらけても、彼にとって大した重さになっていないのかもしれなかった。少し悔しくて、同時に頼もしかった。
「……影山くん」
「だから……!」
「ありがと……」
「……おう」
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ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ReG | 作成日時:2022年3月22日 15時