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『もしも〜し!神風ちゃん?一昨日ぶり!元気?』
「…………」

電話を切った。
素早い手つきで一時的に着信拒否設定にしておく。弥生ちゃんから教わったことが、まさか役に立つ日が来るとは。一時間後に外すように自分の脳内に書き込んで、私は部室のドアをノックした。

「はーい。ほら、お前ら怒られな?」
「そ、そんなに酷かったんですか……?」

菅原先輩に促され、恐る恐る部室の中に入る。目の前で影山くんと日向くんが正座をして私から目を逸らしていた。あまり期待出来なさそうだなあ、と思いつつ、元々期待はしていないのでさっぱりと割り切った。

武田先生が東京の高校と練習試合という名の遠征を組んでくださったのだが、それに行くには期末テストで赤点を回避しなければいけないのだった。赤点になれば補習で行けなくなってしまうから。

少し散らかった部室の中でちょこんと座っている二人は置物みたいだった。とりあえず直近の小テストを出しておいてね、と言っておいたので、そちらを見ることにする。

「……わあ」

見事にバツが多かった。それはもうテスト用紙を埋め尽くさんばかりに。
月島くんと山口くんもまだ残っていて、私の手の中の用紙を覗き込むなり笑った。気持ちは分からなくはない。

「ええと、そうだね……。日向くんについては私、元からどのくらい取れていたかは分からないから、とりあえず怒らないけれど……、影山くんは、中学の時に散々教えてこれだから、ちょっと怒ろうかな?」
「ウッ」
「一回怒られろ」

そうでもなきゃお前の馬鹿は治らん、と言わんばかりに澤村先輩が冷たく見下ろした。ここまで弱々しい彼を見るのは久しぶりで、少し面白かった。

「嘘だよ。でも、中学の時出来ていた問題も何問かあるのに間違ってるから、そこは後で復習してね。テスト、赤点取らないように、私もお手伝いするから」
「ほっ、ほんと!?」
「うん……部活の後とお昼休みで……、……そうだね、一週間で何とかできるかな」
「マジで!?」
「なんか本当に頭が上がらないな、お前ら……」

私の言葉に先輩方が目を丸くして私を見た。中学時代の影山くんだって一週間で何とかなったのだ。彼等の努力次第だが、どうにか出来なくはないだろう。

月島くん達が「本当に……?これを一週間で……?」と言ってきたので、苦笑で返した。勉強は私の得意分野だと知っているだろうに。教えることも例外ではないのだ。

その瞬間、ピピピピ、という電子音が私の思考を遮った。

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ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ReG | 作成日時:2022年3月22日 15時

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