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私は怒ることは苦手だ。私が怒ったところで相手にいい影響を与えることはないと考えているし、そもそも怒らなくても問題を解決することはできる。無駄な容量を使いたくはない。

怒る方も怒られる方も良い気はしない。それを私は知っていたからこそ、怒ることを避けていた。それ以前にも私は自分を俯瞰して見すぎているので、自分の行動の最適解を毎回選択して生きている。その過程において、怒りは必ずしも必要なものではない。

だけど、全く怒れない訳では無いのだ。ただ、苦手だというだけで。

「……学習して頂けていないようですね、及川さん」

私から距離を取った影山くんを不思議そうに見ていた人達が全員私に視線を集めたが、今の私にはそんなことで怯む心はない。

「私は前回、『私のお友達を悪くいう人は嫌いです』と言外に言ったと思うのですが、お分かり頂けていないようで、残念です。頭のいい方だと思っていましたが、どうやら私の勘違いのようですね」

電話先で、戸惑ったような声がした。電話越しだから確信は出来ないが、恐らく金田一くんのようだった。もしかしたらこれは及川さんの携帯ではなく彼の携帯なのかもしれなかった。

「商品、と仰っていましたが、私は一人の人間であって物ではありません。その陳腐な約束事をされる時に、少なくとも私に承諾を取っておく必要があったと思いますが、そこはいかがお考えで?」
『い、いや、後で取ろうかな〜って』
「ええ、そうでしょうね。思いつきで言った言葉をこのように本当にしてしまうというのは、私でもしませんけれど、予測は出来ます」

つらつらと言葉を繋ぐ私に、どうやらようやく皆さんは恐怖心を抱いたらしい。それで言えば影山くんはなんと早い回避だったか知れない。やはり彼は私のことをよく見ている。

「しかし、ええ、陳腐な約束とはいえ、してしまったものは仕方ありません。期間を限定して頂けるのであればそちらにお伺いしますけれど、及川さん」
『は、はい』
「私、怒るのは、苦手なんです。だから、怒らせないでください」

それだけ言って静かになった部室と電話先に、小さく息を吐いた。話す口も止まらなくなるし、自分自身が浅ましく見えてしまうから、怒るのは嫌いなのだ。

「詳細は金田一くんからお伝えください。今後彼以外が私の携帯にかけてきた瞬間、その約束事は破棄させて頂きます。では」

相手の返事を待たずに電話を切って、ふと目の前の彼らを見る。恐がった瞳に、肩を緩めて苦笑した。

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ReG(プロフ) - なこさん» 閲覧して頂きありがとうございます。今後も読んでくだされば幸いです。 (2022年4月18日 14時) (レス) id: d40d8fc65b (このIDを非表示/違反報告)
なこ(プロフ) - とてもおもしろくてすいすい読めて読み応えがあります(^-^)/ 更新楽しみにしております(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)” (2022年4月2日 19時) (レス) @page22 id: 5054bb840e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ReG | 作成日時:2022年3月22日 15時

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