【第参拾壱話】 横浜:探偵社内:医務室 ページ43
敦が取り留めない思考をして居る間に少女は立ち上がり、唖然として居る探偵社の面子に向き直った。
両手を添え、真っ直ぐに姿勢を正す。
『初めまして、皆様方』
凛とした声で探偵社員の意識を自分に向ける。
何処か『上に立つ者』を感じさせる声音に、柔らかな微笑み。
『此の度は助けて頂き誠に有難う御座います。
身元も判らない私達を受け入れて下さり……感謝の言葉が尽きません』
話し方、態度、凡てに於いて洗礼された動作。それは彼女の品の良さが伺える。
礼儀正しく感謝を述べる少女に、居住まいを正した福沢が対応した。
「……頭を上げて呉れ。私達は当たり前の事をした迄だ。
それに、あの『黒い霧』を払って呉れたのは貴君だろう。礼を云うのは此方だ」
先刻の異常現象……黒い霧の恐怖も少女と話して居れば、穏やかになる様な感覚。
福沢が話して居る間に、探偵社の調査員も事務員も復活し始めた。
探偵社員達はそこそこ強靭な精神を持って居るし、根性もあるだろう。
伊達に、幾つもの死地を駆け抜けて来た訳じゃないのだ。
『優しい人ですね。異常な現象を見たのにも関わらず、己を保てるのは素晴らしい。
貴方様は謙遜しますが……それでも、私は御礼を云いたいのです』
柔らかく微笑む、福沢と比べ約二十糎位だろうか……丁度胸の高さに頭がある。
(齢は……十八歳位か?随分と大人びて居るが……此の娘が剣士達の主人なのか。
私は次に如何するべきだ、情報を得るには此の少女に如何切り出せば良い?)
福沢がぐるぐると黙考して居る事に気付いて居るのか、少女はにこやかな笑みを浮かべ黙って立って居る。周りの調査員や事務員の複数の探る様な視線にも気付いて居るだろうに、両脇に並ぶ膝丸と堀川に挟まれた侭微動だにしない。
見透かされて居る――そう感じ乍らも福沢は瞬時に、最速に考える。
交渉において、使える方法は三種類。
相手を自分より上と見るか、下に見るか、平等に見るか。手持ちの情報を最大限に使い交渉せねば、喰われるのは此方側だ。
部下に人心操作に長けた者が居るが、頼れる状況ではないだろう。
故に、自分が切り出すしかないだろう。先手必勝、次いでに毒を食らわば皿迄だ。
「貴君達の事を、私達に教えてほしい。名前も、己が何者かも、怪我の理由も。
凡てを把握した際に……
探偵社は、貴君達が何者でも受け入れよう」
鬼か、蛇か。
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乙女になりたい。(プロフ) - お疲れ様でした!!とても楽しい作品でした!! (2020年10月11日 1時) (レス) id: a5fb63b44e (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - あやとりさん» お久しぶりです、僕の方こそ有難う御座います!続編も合わせ、是非とも宜しく御願いします……♪ (2018年3月10日 22時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
あやとり - 焼きまんじゅうさん» ふわぁ…私こそ毎回この作品を楽しませていただいき本当にありがとうございます!これからも頑張ってください! (2018年3月10日 20時) (レス) id: bfcb2a7bd0 (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - はい、複数人ならば構いませんよ!リクエスト有難う御座います……☆ (2018年3月10日 20時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
優梨奈(プロフ) - 粟田口と三条(でもいいんですかね?)でお願いします! (2018年3月10日 20時) (レス) id: 7cf4248c7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:焼きまんじゅう | 作成日時:2017年10月9日 5時