【第参拾話】 横浜:探偵社内:医務室 ページ42
「――【主】」
吹き荒れる風が止み、跪いた膝丸と堀川の声が、やけに響いた様な気がした。
刀を納め、中央に立つ少女に騎士の様に
合わさった声はどこか恍惚として、そう呼ぶ事を待ち侘びて居た様。
目を閉じて直立する少女はまるで、崇め讃えられる『生き神様』の様だった。
少女が身に着けて居るのは量産型の青い入院着なのに、それすらも何かの儀式に使われる特別な衣装の様に思えてしまう。
『……顔を、上げてください』
鈴を転がした様な優しい声。
誰もが安心する様な、母親が自分の子供を諭す様な、凡てを抱擁する軟らかな音。
『後免ね……貴方達を、心配させました。刀も、躯も傷で大変だったでしょう?
御免ね……目を醒ますのが、遅かったね。
私を助けて呉て、有難う』
ふわり、しゃがみ込み乍ら未だ傷を負う膝丸と堀川の頬に手を添え、少女は優しくするりと撫でた。 目に暖かな光を讃え、唇を噛み締め泣きそうな膝丸達を抱き締めた。
「ッ、あるじ、さんっ……!」
『はい、堀川。私は此処に居ますよ』
姿勢を崩し、膝立ちで泣く堀川を優しく撫でる。
抱き締めた二人の間で、目を閉じた。
『……』
その瞬間、ぶわッ!と柔らかな光と桜吹雪が舞踊り、膝丸と堀川を包み込む。
力と知識がある者が居れば、それは莫大な霊力と規格外の力による『手入れ』だと認識出来るが……一般の探偵社の皆には唯、一瞬にて眩しく暖かな光が生まれたとしか思えない。
桜吹雪は一瞬にて終わり、凡てが収まった時にはもう膝丸と堀川の傷は跡形も無く消え、ボロボロだった服も、煤で汚れた刀すらも美しい――本来の姿に戻って居た。
「……ンだい、ありゃ」
目の前で起こった非科学的で
『異能力』? ンな馬鹿な。火を出したあの力は一体何だ?
……有り得ない。自身が知る事実から掛け離れ過ぎて居る。
皆が唖然とする一方、敦は……膝丸と堀川の話を聞いて居た敦だけは理解出来た。
アレは、『異能力』じゃない。アレが……少女が使ったのは、『巫術』だと。
『現実の理論を度外視した力』で『個人により性質が変わる』、『持つべき者に宿った力』。異能力に似て居るが、性質から何から迄も違うもの。
巫術を使う、膝丸と堀川の二人を従える者。『
……此の三人は一体、何者だと云うのか。
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乙女になりたい。(プロフ) - お疲れ様でした!!とても楽しい作品でした!! (2020年10月11日 1時) (レス) id: a5fb63b44e (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - あやとりさん» お久しぶりです、僕の方こそ有難う御座います!続編も合わせ、是非とも宜しく御願いします……♪ (2018年3月10日 22時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
あやとり - 焼きまんじゅうさん» ふわぁ…私こそ毎回この作品を楽しませていただいき本当にありがとうございます!これからも頑張ってください! (2018年3月10日 20時) (レス) id: bfcb2a7bd0 (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - はい、複数人ならば構いませんよ!リクエスト有難う御座います……☆ (2018年3月10日 20時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
優梨奈(プロフ) - 粟田口と三条(でもいいんですかね?)でお願いします! (2018年3月10日 20時) (レス) id: 7cf4248c7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:焼きまんじゅう | 作成日時:2017年10月9日 5時