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【第弍拾参話】 横浜:探偵社内:医務室 ページ30

医務室に向かい、扉を開けて中に入った四人。

中では与謝野が少女が眠る寝台の傍で座って居た。二人が入って来た事に気付き、席を立つ。

「待たせたね……治療は終わッたよ。傷は塞いで心拍も安定。
躯にはもう問題無いけど、何せ眠りが深くてねェ。

今日中には目を覚ますだろうけど……目が覚めたら完治サ」

ぐるり、頸を回して与謝野は息を吐く。

少女が眠る寝台に膝丸達は駆け寄った。眠る少女は顔色も良く、規則正しく胸を上下させ呼吸する。その様子を見て二人は安堵の息を吐いた。

「よ、かった……」

堀川は静かに息をする少女の手を握って座り込んだ。
ほぅ……と息を吐き、少女の手に頬を寄せる。

目を閉じれば豊かな霊力が感じられ、「嗚呼、無事だ」と安心する。

「……与謝野、だったか。ちゃんと躯を治して呉れたんだな」

するりと膝丸は敵の短刀に刺された場所を指先でなぞり、完全に塞がって居る事を確認して与謝野に視線を合わせた。

「勿論。アンタとの【約束】だろ?」

ニィ、と唇を上げ与謝野は強気に笑う。
与謝野はキチンと『必ず助ける』と云う膝丸との約束を叶えたのだ。

「……嗚呼。お前は俺との約束を守って呉れた。

『約束の果て、慥かに叶えた事を此処に承認した』。……感謝する」

言葉を紡ぎ乍ら膝丸は与謝野の腕――自身の『跡』を付けた場所を見て空をスゥウ……と切った。さり気なく与謝野が腕を見れば、紅い手形は跡も無く消えて居る。

「……之で、女の子の目を覚ますのを待つだけですね」

入口付近で太宰と共に見て居た敦は、寝台に眠る少女を見た。

栗色の髪。目を閉じ揺れる睫毛は長く、淡い唇が震える。
細く白い手に、しなやかな指先を彩る薄桃色の整った爪。

静かに眠る少女は世のうつくしさを詰め込んだ、神の寵愛を受けたものの様だ。

堀川と膝丸が傍に寄り添う光景はまるで騎士が……否、二人は『刀』だから、姫を守る『近衛兵』みたいだ。と敦は思う。

『主』を護る、守護の刀。

三人の関係は敦には判らないが、途切れない縁が三人を結んで居るのだろう。
少女の為なら何でも行う。そんな絶対的忠誠心が膝丸と堀川にある様に思えた。

……若しかして、彼女の為ならば膝丸さん達は人を殺めるのを躊躇しないのでは?

路地裏で初めて会った時、敦と鏡花は堀川に刀を向けられて居た。
二人が向けた冷たく無機質な瞳は、人を何とも思って居なかった。

(……少女が、目覚めなかったら?)

有り得る可能性に、サアッと血の気引いた。

【第弍拾肆話】 横浜:探偵社内:医務室→←【第弍拾弍話】 横浜:探偵社内:応接室→医務室



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乙女になりたい。(プロフ) - お疲れ様でした!!とても楽しい作品でした!! (2020年10月11日 1時) (レス) id: a5fb63b44e (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - あやとりさん» お久しぶりです、僕の方こそ有難う御座います!続編も合わせ、是非とも宜しく御願いします……♪ (2018年3月10日 22時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
あやとり - 焼きまんじゅうさん» ふわぁ…私こそ毎回この作品を楽しませていただいき本当にありがとうございます!これからも頑張ってください! (2018年3月10日 20時) (レス) id: bfcb2a7bd0 (このIDを非表示/違反報告)
焼きまんじゅう(プロフ) - はい、複数人ならば構いませんよ!リクエスト有難う御座います……☆ (2018年3月10日 20時) (レス) id: 1eccbbab7e (このIDを非表示/違反報告)
優梨奈(プロフ) - 粟田口と三条(でもいいんですかね?)でお願いします! (2018年3月10日 20時) (レス) id: 7cf4248c7f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:焼きまんじゅう | 作成日時:2017年10月9日 5時

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