それぞれの思い10 ―包帯 ページ47
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「チッ…、ったく、自分の手を切る馬鹿がどこにいる…」
ソファーに座り、Aの傷の手当てをしながらリヴァイは小さく舌打ちした。
「……ごめん。…でも、私がエレンに刃を向けるのに、自分が無傷なのはおかしいと思って……」
「どんな理屈だ、馬鹿が。…いくら数日で治るとはいっても、訓練にも支障が出るだろうが」
「こんな傷大したことない。ブレード握れない訳じゃないし。…訓練にはちゃんと参加する」
「…当然だ。そこまで甘やかすつもりはねぇぞ」
そう言いながら、消毒を済ませると、リヴァイは包帯を手際よく巻き始める。
「……兵長、…私はこのままリヴァイ班にいたいです。エレンの力にもなりたいし、自分の力をちゃんと活かしたい」
Aの言葉に、一瞬だけリヴァイは包帯を巻く手を止めた。
「…俺に殴られた意味はわかったんだろ?」
「…感情に流されず、状況に合わせ冷静な判断を下す。必要であれば、『捨てる』覚悟を持つ」
「……わかったようだな…。この傷がその為の『覚悟』だろ?だったら俺は、もう何も言うつもりはねぇ」
「…じゃあ、…このままリヴァイ班にいても?」
「…あぁ。…だが、二度目はねぇからな」
「…約束する。もう、選択は誤らない」
「……なら、それでいい」
リヴァイはそれ以上の言葉を続けなかった。
本当はもっと言いたいことがあるだろうに……、そう思いつつ、何も言わずに自分の言葉を信じてくれることを嬉しく思う。
それと同時に、Aは胸が締め付けられるような苦しさに襲われた。
自分を信じてくれたリヴァイに、「ありがとう」と言いたいのに、その言葉が出てこなかった。
それよりも、自分の情けなさが先に立つ。
自分の左手に包帯を巻くリヴァイの仕草を見ながら、Aは昔のことをいつの間にか思い出していた。
壁外調査で左手を痛めた時、何も言っていないのに怪我に気づき、リヴァイがテーピングをしてくれた。
あれは、リヴァイと初めてキスした日のこと……
いつも何も言わなくても、この人は私に手を差し伸べてくれて、必要な何かを与えてくれる。
いつだってそう。
出会ったときからずっと…
私は結局、あなたに助けられてばかりで、何一つ、あなたに返せていない
本当は支えたいのに、いつもいつも支えられてばかりで……
「…おら、…終わったぞ」
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まやや - Wwwハンジwwwwwアニメでは団欒の後に出てくるからそれがここでも生かされてる(?)面白い。ちょっとえちちな展開もいい。嫉妬しちゃう、第三者目線でしか見れないから。。つら (2020年10月24日 0時) (レス) id: e7ac9c5abf (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - ミーナさん» コメント感謝です!!嬉しいお言葉を、たくさんありがとうございます!!本当に嬉しすぎます(>_<)夢主を含め、リヴァイ班みんなの内面の葛藤などを少しでも書ければと思っております!続き頑張ります!!応援ありがとうございます!! (2015年12月14日 22時) (レス) id: e76103ed1a (このIDを非表示/違反報告)
ミーナ - 素晴らしいですね!!!大好きです!すごく大好きです!!頑張ってください!!!なんか、人間らしさ…?何かが出ていて感動します! (2015年12月14日 19時) (レス) id: 9ea20a320e (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - あいねこさん» 嬉しいコメントをありがとうございます!!感動しましたなんて…嬉しすぎです(ToT)応援本当にありがとうございます!!(*´∀`)更新頑張ります!! (2015年12月14日 8時) (レス) id: e76103ed1a (このIDを非表示/違反報告)
あいねこ - すごく感動しました!これからも頑張ってください。応援します! (2015年12月14日 1時) (レス) id: cc9f9b8f42 (このIDを非表示/違反報告)
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