放課後の彼 (ページ5)

今日:22 hit、昨日:22 hit、合計:2,044 hit

─綾小路side─（後編）ページ5

それからオレは、たまにAと食堂に行ったり教室でも喋るようになっていた。

「綾小路くんってすごいよね」

いつも通り話していると、Aは唐突にそう言った。

綾小路清隆「...そうか？」

「うん！人のことをよく観察しているし、優しいし！」

「この前だってこけそうなところを助けてくれたでしょ？」

──優しい？オレが？

それは違う。人をよく観察しているのは、利用できそうなやつがいるか把握している最中だからだ。

こけそうなところを助けたからと言ってその行動がオレの性格みたいだと。...オレ自体を表しているわけではない。

綾小路清隆「(何かを疑うことを知らないのか？)」

そんなAをとんだお人好しだと、世間知らずだとオレは思っていた。

「やっぱり...ちょっと大人びてるよね、綾小路くんって」

綾小路清隆「...オレにはよく分からないな。」

「ふふ......そっか」

その瞬間、今までオレの頭に浮かんでいた様々な疑問が、Aの笑顔で全て吹き飛んでいくように感じた。

綾小路清隆「(...自分がよく分からない)」

自分の心情が読み取れないままでいると、遠くからAの名前を呼ぶ声が聞こえた。

マサト「A、こんなとこにいたのか」

「マサトくん？私に何か用事だった？」

マサト「ああ。来週のことについてお前に聞きたいことがあるんだよ」

突然Aの前に現れたマサトとやらは、Aの笑顔を一人で全部受け取っていた。

二人の話が盛り上がってきたところで、Aはオレの方を見ると申し訳なさそうな表情をした。

「ごめん、綾小路くん...ちょっと急用ができちゃったからまた明日話そうね」

もう行くのか？マサトのところに...？

綾小路清隆「ああ。また明日な」

自分と思っていることとは裏腹に、オレはAにそう声をかけると気遣った表情のまま Aは手を振ってから、去っていった。

綾小路清隆「...なんだ、このよく分からない気持ち...」

本当はもっとAと話したかった。

なんでAはあとから来たやつについていったんだ？

オレと...そんなには話したくなかったのか？

気持ちがごたついてきたオレは、Aに確認したいことがいくつか出てきてその疑問を抑えきることができずに、とうとうAを教室に呼び出してしまった。

──教室に呼び出した時、Aと話しオレは初めて Aに『執着』していることに気がついたのだった。