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劇が始まって十数分が経った。俺は、今しがた出番に一区切りついたので、観客から見えないところで次の出番を待っている。
普段は絶対に見れない、Aのドレス姿には、不覚にもキュンとした。うん、キュンと。こういう時に自分はAのことが好きなんだと実感させられる。
ボーッとAの演技を見ていると、トントンと肩を叩かれる。振り返ると、確かAの友達の山田と田中が立っていた。心なしか、その顔はニヤついているように見える。
「……なんだ」
怪しく思って眉を顰めると、田中は両手を上げておどけてみせた。
「そんな怖い顔すんなよ」
「実は豪炎寺くんに折り行って頼みがあります!」
そう言った後、山田はポケットから折り畳まれた紙を取り出し、俺に差し出した。
「急遽内容を変更します!豪炎寺くんはこの紙に書いてある通りにやってね」
「変更って……そんなすぐに台詞覚えられるのか?」
「大丈夫大丈夫」
「………」
気持ち悪い……。
そう思いながら紙を受け取ると、相手は心底嬉しそうに笑った。
紙を開くと、変更された内容が記されていた。それはいいんだ、別に。もう変更されたことに関しては何も言わない。
「何だこれ…!」
劇の真っ最中なので、小声で文句を言うと、二人はニタァと更に気持ち悪い笑みを浮かべた。
「やってくれるよな?」
「できるか!第一Aはこのこと知ってるのか?」
「知りません。サプライズプレゼントだよ」
「わけのわからないことを言うな。俺はやらないぞ。台本通りにやるからな」
貰った紙を突き返すと、山田はそれをピッと受け取り、俺の目の前でヒラヒラさせた。
「ふーん。あ、そう。じゃあ他の人にやってもらおうかな〜。小人なら誰でも良いわけだし」
その言葉を聞いた途端、自分の思考回路が一瞬停止するのがわかった。
あの内容を?他のやつが?Aと?
「俺達はお前ならAも良いかな〜と思ったんだけど。そうかぁ、豪炎寺が嫌なら他のやつに頼むしかないよなー」
段々と心に余裕がなくなっていくのを感じる。
な、何焦ってんだ俺は。ホントにキスとかするわけでもないし。
「桜井とかは?中々イケメンだしAも喜ぶでしょ」
わかってる。こいつらが俺を釣ろうとしてるのは十分わかっている。
でも
「……俺がやる……」
他のやつがやるんだったら俺がやる。
視界の端で山田と田中がハイタッチをしていた。
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レイ - 続きお願いします! (2022年5月15日 17時) (レス) @page32 id: c51717b503 (このIDを非表示/違反報告)
冷(仮) - 葉兎野鳥さん» 私、この作品好きです!更新楽しみにしております! (2019年1月10日 1時) (レス) id: 43543d3530 (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - 鈴松信@違反報告する時は声かけてね(´;ω;`)さん» コメントありがとうございます。二人は基本的にそういうことが得意な設定です。仲は良いけど付き合ってません。お互い友達という認識です。男女の友情は成立します! (2018年12月3日 18時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
鈴松信@違反報告する時は声かけてね(´;ω;`)(プロフ) - 山田んと田中んいい仕事するなぁ…w (2018年11月24日 12時) (レス) id: e085487720 (このIDを非表示/違反報告)
葉兎野鳥(プロフ) - ぴーさん» 私もこの二人大好きです!いでよ、私のやる気! (2018年10月27日 19時) (レス) id: fad212b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みどりんご x他1人 | 作成日時:2018年9月23日 16時