ダリアの花束を贈る。【KZ】

意想外な一面。 ページ8

◇.



「はーい、じゃあよく手を洗った人から前に包丁とまな板を取りに来てね。」



がやがやと騒がしい室内に、家庭科の先生の声がよく通る。

時は午後一時。

私たち1年A組は自前のエプロンと三角巾で身を包み、調理台に立っていた。



そう、今日の５,６時間目は家庭科の調理実習だったんだ。


私たちの通う学校、浜田は年に二回調理実習が行われる。

そのメニューは毎年違っているから今年は何かと想像できるんだ、だから普通の調理実習の三割増しで楽しみが増える。


そのメニューは実習直前に知らされることになっていて、皆まだかまだかとどこかソワソワしている。


それは私も隣にいるマリンも同じことだった。


「な、今回は何だと思う？
私はクッキーとかケーキのお菓子が良かったんだけど材料的に和食だよな。」




こそこそ耳打ちしてくるマリン。
マリンは意外と甘いものが好きらしいけど、周りにはあまり言ってないらしい。

別に知られてもいいけど自分のキャラに合わないからあまり言ってないんだとか。



私も最初はこういうことは全然知らなかったんだけど、ここ最近特に仲良くなれたのか、私には何も隠さずに甘党だということを見せてくれたの。


今までははっきりと友達がいなかった私。
だから、信用されてる、友達だっていう感覚はマリンは短い期間ながらも沢山与えてくれる。

喧嘩も普通よりは多いんだろうけど、今では最高の友達なんだ。


…性格上意見が合わないことはたくさんあるけれど。


「ん、和食だね、大根とかあるしお味噌もあるもの。」


私たちの前に並ぶのは人参、大根などの野菜に豚肉、そしてお味噌。

加えて沢山の調理器具が並んでいる。



「はい、皆準備が出来たようなので前のスクリーンを見てください。」


先生の声を合図に暗くなる教室。

そしてスクリーンには"豚汁を作ろう!!"というポップな文字と、その下に綴られた沢山の作業工程が映し出されていた。



「やった!!私豚汁めっちゃ好きなんだ!!和食が好きなんだけど豚汁はダントツ。
豚肉の油が汁に染み出してて、超ウマい。」



私の隣でまたもはしゃぐマリン。
へぇ、マリンって和食好きなんだ。このことは知らなかったかも。

勝手な想像だけど、イタリアンフレンチのビュッフェとかが好きそうだったから、少し意外。



「それじゃ、自分の班のメンバーと協力して豚汁を作ってください。はじめ!!」



◇.

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