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◇.
徐々に近づく彩の足音。
そしてようやく長い廊下を渡り終えた彩がリビングの途扉に手を掛けた。
「おじゃまします…?」
ゆっくりと扉を開ける彩。
ギィ…と扉と床の擦れる微かな音さえよく響く。
静寂に包まれたこの空間に存在する僅かな自分の吐息は物凄く大きく感じた。
そしてリビングの世界観を一望した彩。
わぁ…と微かな声を漏らした瞬間。
「アーヤ、お誕生日おめでとう!!!」
パンっ、という乾いたクラッカーの音とともに香る火薬は鼻につく。
驚き一瞬固まった彩だったが、正面に飾られた飾りとみんなの言葉でようやく理解し、ふっと頬を緩ませた。
「ありがとう、みんな!」
◇ ◇ ◇
一通りのお祝いの言葉とプレゼントを渡し終え、それぞれが思い思いに時間を過ごし、あっと言う間に日が暮れ始めた頃。
若武(ほぼ島崎さん)が用意した料理も全員で見事に平らげ、のんびりと皆んなで紅茶を啜って喋っては遊んでを繰り返している。
そんな中ただ1人、上杉だけは上の空のままひたすら考え事をしていた。
頭の中は彩へのプレゼント一色で染まっている。
プレゼントを渡す時に、皆んなが彩に言葉を添えて手渡し、その度に彩が浮かべる柔らかい笑顔を1人気まずく眺め続けたのを思い出した。
彩自身は、上杉からのプレゼントがないことを特に気にしていないのか、はたまた上杉に気を使い、気付かぬふりをしてくれているのか、いつもと全く変わらぬ様子である。
上杉も、彩にせめてもの気持ちを伝えるべく、彩が食べたそうにしていた物は進んで皿に取って渡したし、紅茶だって一緒に色んな味を楽しんだ。
がやはり、上杉にはどうしても納得がいかず、そのまま何も出来ないまま時間は刻々と過ぎてしまったのである。
このままではこの誕生日会はお開きになり解散してしまうだろう。
後日プレゼントを渡すと言う手もあるが、誕生日という日はこの1日だけ。
このたった1日を逃したくはない。
◇.
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清霞(プロフ) - はるはるさん» はるちゃーん( ; ; )有難う、楽しんでもらえたみたいで良かったです!コメント有難う* (2019年1月29日 21時) (レス) id: 61be4c1b32 (このIDを非表示/違反報告)
はるはる(プロフ) - さやかちゃん、ダリアの花束を贈る。完結お疲れ様です。どのお話も好みで、とても面白かったよ。更新される度にワクワクしながら読んでいました。本当にお疲れ様-* (2019年1月27日 20時) (レス) id: 91ccc51c14 (このIDを非表示/違反報告)
清霞(プロフ) - Wings(心渚)さん» みなちゃんありがとう、更新はめちゃめちゃ遅いけどのんびり待ってくれてると嬉しいです* (2018年12月25日 19時) (レス) id: 61be4c1b32 (このIDを非表示/違反報告)
Wings(心渚)(プロフ) - 清霞さん» やっぱこのお話好きだわ笑頑張ってね、応援してます。 (2018年12月25日 18時) (レス) id: ce1217488b (このIDを非表示/違反報告)
清霞(プロフ) - 沙也加さん» わー、ありがとうございます( ; ; )やっぱりkzのわちゃわちゃはいいですよね…!もっとわちゃわちゃシリーズを書けるように頑張ります、閲覧にコメント有難うございました* (2018年12月8日 14時) (レス) id: 61be4c1b32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:清霞 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/somerina021/
作成日時:2018年10月8日 10時