4.笑顔 ページ4
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「いいじゃない。仕事を頼んだんですもの、挨拶したくて」
おしとやかな口調。
小さな口は、大きく開かれず、かわいらしく動く。
笑顔は絶やさず、澄んだ、少し小さな声が体にしみこんでくる。
ミツバに似てる。
雰囲気だった。
顔も、体格も、そこまで似ていない。
声の出し方や喋り方はどこか似ているけど、声質は似てない。
髪だって、総悟よりもどこか薄い。
何より、腰の下まであるそれは、紛れもなく、あいつとは違った。
「こんにちは。中で父と母が待ってます。
詳細はそこで話されると思うので、案内します」
絶えない微笑み。
どこか、人懐っこそうな感じもする。
20�兀垢�らいありそうだな。
何枚も着込んでいそうだけど、シルエットから細さがわかる。
小さくて細い、可愛らしい、動物みたいな。
「こっちです」
「お嬢様、きちんと上着を」
そう言って肩に下がっていた上着をメイドにかけなおされる。
ふふふと笑っている、Aと呼ばれた人物。
この人が、今日俺たちが護衛する人だ。
ここです、そう言って、行儀よく扉を引くこの人。
中にはこちらも、オーラというか、輝いて見える夫婦が座っていた。
「お父様、お母様、お連れしました」
「A、どこにいたんだ？」
親も、笑顔を絶やさない。
こちらに来なさいと促されたその人の表情は、笑っているのにどこか堅くなった気がする。
ニコニコとしながら、親の元へ行くAという人物。
そして、部屋中に響く、肌が激しくぶつかる音。
「な…」
急な出来事だった。
にこやかに笑っている父親らしき人物は、その人の頬をぶった。
そしてぶたれた張本人は、それでも笑顔を絶やさずに、謝ったんだ。
なんだ、来て早々。
わけありか？
大事に大事に育てられてそうな女は、まるで、ぶたれ慣れているかのようだった。
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作者名：あい | 作成日時：2021年1月19日 22時
