24.ズルい ページ25
・A・
言ってしまったのだ。
だってズルいじゃない。
普段はニコリともしないくせに
私が恥ずかしがってるのを見て笑うなんて。
そんな姿、知らない。
でも、私が笑わせたんだ。
私の言動が、この人を笑わせた。
その笑顔は確実に、私に見せるものだった。
まるで私の気持ちを勘違いだとでも言いたげな土方さん。
ひどいな、一目惚れなのに。
あの日から、初めて家出したあの日から
私は、あなたばかり考えているのに。
でも、そんな考えに至るのも仕方ない。
私は男性を知らない、世間知らずな女だから。
あなたが私を突き放すためにそれを利用するのなんてわかってた。
そして何より、私はあなたを幸せにできないし
きっとあなたも、私を、女を幸せに出来ないと思ってる。
「・・・土方さん、私、土方さんの煙草の香り好きなんです」
あれから特に何も無く
遅い時間にお風呂を借りて、目を手当してもらった。
いつの間にか襖は閉じられていて
彼がいる場所から光が漏れている。
筆が紙を流れる音がかすかに聞こえる。
まだ起きているとわかっていてそう言った。
彼は、何も言わないけれど。
「煙草なんて、この間初めて見ました。香りを嗅ぎました。
もっと、嫌なもんだと思ってました。意外と平気なんですね」
「・・・どんどん臭くなる。
俺から距離置きたくなるくらいにはな。
もう寝ろ、お嬢様は寝る時間だ」
「お泊まりなんて初めてです。
それに私、最近こっそり夜はおきていたので」
まだ眠れないです、私の言葉にため息をついて
それでも、
「目は大丈夫か」
話し相手になろうとしてくれるその優しさが
私に、あなたをさらに好きにさせる。
・
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作者名:あい | 作成日時:2021年1月19日 22時