15.煙草 ページ15
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そのままみんな自己紹介をして、何をして遊ぶかという相談に。
「Aはなんでそんな煙草臭いの来てるアルか」
「…煙草？」
あ、この上着の独特なにおい、土方さんの煙草…。
ニコチンが移るアル、という神楽ちゃんの言葉に笑いがこぼれた。
「私、この匂い好きよ、何でだろう、煙草なんて、初めて言葉にしたのに」
それほど、縁のなかったものなのに。
臭いだとか、副流煙がどうだとか、色んな話を聞くけれど、
どんなものだろうと、この匂いが、土方さんの匂いだと言われると妙に納得で、
私にとってなんら不快感のない匂い。
「土方さん、煙草、我慢しなくていいですからね」
「…あぁ」
それでも吸わない土方さん。
部屋に閉じこもってばかりいた私の体が強くないことを気にしてくれているのかな。
きっと、先にわたっているだろう私の資料にそんなことが書かれているはず。
私が倒れでもしたら、家計にとって大問題なんだから。
そんなに弱くないのに、と苦笑い。
それは、単純に、部屋にこもっていたことが原因で、
何か病気を持っているわけでもなんでも、ないのに。
それでも、どんなことを思っても、
もしかしたら、土方さんが私のためにしてくれているのかもしれない行為が嬉しくて。
自惚れだってとしても、今は、この喜びを知っていたい。
「やっぱ缶けりアルな」
「缶けり？」
「Aちゃんはやったことがありませんか！楽しいんですよ！缶けり！」
「そよ姫様は何でも知っていますね」
「神楽ちゃんたちが、たくさん、教えてくれたんです」
えへへ、と照れ臭そうに笑うそよ姫様。
限られた自由を満喫しようと、楽しんでいる姿が、とても、立派に見えた。
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作者名：あい | 作成日時：2021年1月19日 22時
