13.手 ページ13
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「まてまて、どこ行く気だ」
「あれ?違いましたっけ?」
中に入って数十分。
何度も何度も飽きずに迷子になろうとする。
とりあえず、この人は正真正銘の方向音痴だ。
ほんと、、こうやってAさんを止めたのは何度目だ・・・。
俺がちょっとでもぼーっとしてみろ。
そよ姫様の所に着くまで何時間かかるか・・・。
はぁ、とまた小さくため息を吐く。
手のかかるお嬢さんだ。
あー、こっちか〜と、また変な道を選ぶAさんの手を咄嗟に掴んだ。
「え・・・」
「危なっかしい!・・・ちゃんと着いてこい」
そう言って手を引けば、静かになるから。
さすがに、無礼なことをしたか?
なんて、ちらりとそっちを見れば、あははと笑っているだけ。
・・・Aさんが顔を赤らめていることには、気付かないふりをした。
もし、赤かったってそれは、男慣れしてないだけだ。
そういうんじゃない。
「そよ姫様ー」
なんとかそよ姫様の部屋の前に到着すると
そよ姫様を呼ぶAさん。
「誰アルか!そよちゃん!誰か来たヨ!」
「なんだぁ?借金取りか、将軍家も大変だなぁ」
「銀さん!そんなわけないでしょ?!
姫様、出なくていいんですか?」
「Aちゃんだぁ」
おいちょっと待て、とりあえず待て。
そよ姫様以外が部屋にいることに気づいたAさんの表情がこわばる。
そうだよな、これはどう考えてもあの鬱陶しい銀髪たちの声だ。
「ひ、土方さん、私、髪、隠さなきゃ」
どうしようと青ざめるAさんは、さすがに笑ってなくて、とりあえず、俺の上着を頭からかけさせた。
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作者名:あい | 作成日時:2021年1月19日 22時